寝付きが悪い

真っ暗な部屋で目を閉じて寝ているのに、眠れなくてじっとしていた。
家の真ん中あたりから湧いてくるような虫の声と、家々の向こうからやってくる車の音が、瞼の裏に広がる墨汁色した水面に光を垂らし、じわじわと広がる波紋が、やがて風景になって、見えていない虫も、車も、夜の道も、全部この部屋の中にあるような気がする。うるさいとは思わないけど、いい加減、眠らないとさ、なんて思いとは裏腹に、私はごそごそと布団の中でDSをつける。ティーンという音をさせて、マリオを走らせて、てれっててれっててってってって死んで、スイッチを切って、暫くするとまた、風の音、車の音、虫の声、もう蝉がないていない。そうかもう秋か、秋の次は冬か、寝返りをうって、ノノ、空白の後にまた戻ってきてしまう。
そんなわけで今日は一日中、眠かった。