ひとかげ/よしもとばなな

ひとかげ

ひとかげ

作者自身によるリメイク、ということをしらないで買った。吉本がひらがなになったのも知らなかった。でも「とかげ」のリメイクだとしっていたら読まなかったかもしれないので、しらなくて良かった。
「とかげ」は最初読んだ時、あんまりすきじゃなかったのだ。でも、この「ひとかげ」を読んだら、なんですきじゃなかったんだろうって思った。巻末には「とかげ」も収録されていたので再読したのだけど、読み比べてみると、主人公ととかげは、まるで別人のように感じられる。そして私は「ひとかげ」にでてくるとかげのほうが、好きだ。
基本的な筋はかわっていないのだけど、「ひとかげ」では、「とかげ」で描かれなかった行間の思いみたいなものがきちんと文章に現れていて、この人だったら、こうするだろうなという仕草も、きちんと人物に沿うように書き直されている。この改訂を見ると、小説の中の「人物」も、ちゃんと生きているんだな、と思う。とにかく決定的な、とかげについての描写が変更されてるのが、しっくりきた。主人公の気持ちの移ろいも、言葉を継ぐことでずっと滑らかになっていて、物語自体に集中することができる。

彼女の手に触れることができたらもうなんでもする、神様!

でも、やっぱりここが、名場面だ。「。」が「!」になおされてるのも、重要。