肝試し

自動販売機の取り出し口に手を入れるのがなんとなく恐い。
それがなぜなのか、今日やっとわかった。
小学生の頃にやった、肝試しだ。
修学旅行で、先生がお化け役だった。竹やぶの奥にある神社まで行って、行ってきた証拠に、賽銭箱の前においてあるくじ引きの箱から1枚引いてくるっていうルールだった。
夜の竹やぶは無気味だったけど、みんな誰とペアを組むかに夢中だったし、私もまた、その頃好きだった男の子と一緒がいいなぁなんて、それなりに楽しみにしてた。
それで、結局誰と組んだのかはもう忘れてしまったけれど、先生のお化けがちっとも恐くなかったのは、みんなで文句を言ってその後に怪談大会が開かれたくらいだから、確かだと思う。(そしてその「怪談」のほうがずっと恐かった)
びびりな私も、肝試し余裕じゃん、なんて思いながら、さっさと賽銭箱の前につき、くじ引きの箱に手を入れたんだった。

そして自動販売機に手を差し入れるたびに、思い出す嫌な感じは、それだった。
こんにゃくだ。
くじ引きの箱の中には、こんにゃくがぎっしりと詰まっていたのだ。

思い出すだけで気持ち悪い。くじがこんにゃく。こんにゃくを持ち帰る肝試し。
今でも自販機に手を差し入れるとき、というか目の届かない場所に、手を入れるとき、その先にこんにゃくがあるような気がして、とてもおそろしい。