残るのは輪郭

高校の終わり頃、僕は心に思うことの半分しか口に出すまいと決心した。(略)僕は自分が思っていることの半分しか語ることのできない人間になっていることを発見した。「風の歌を聴け」/村上春樹

外側から定義される物語に、捕われまいと抵抗しているうちに、いつのまにか、自分の定義に捕われているということはある。
例えば、「差別されている」と感じ、その価値観を覆すために戦う、とか、その差別自体を無意味なものとみなし自分が自分を定義するものであると考える、とか。
私の思考回路はどちらかというと後者に近く、自分で考え、自分の言葉で話し、他人のそれも尊重する…、ということを、いつからか主義のように感じていて、それは今もできてるのか不明なんだけど、でも既に時折、その主義に捕われているように感じることもある。
他者の定義、とか、自分の定義、とか、別物のように考えているけれど、実はメビウスの輪状に裏表につながっているんじゃないのと感じることは多い。裏になったり表になったりしながら、取り除いていって残るのは輪郭だけ、みたいな感覚を、なんといっていいのかまだわからないんだけど、
最近、今の方法では埋まらない隙間があるような気がしている。輪郭を広げたら、強度が薄れるような不安はあるけれど、案外大丈夫なのかもという、無根拠な楽観もあったりして。