Bonnie "Prince" Billy/The Letting Go

Letting Go

Letting Go

Bonnie "Prince" Billy名義では三年ぶり、で、何枚目のアルバムなんだろうな。
この人のアルバムは集めるのがなかなか難しい(情報があんまりないのにたくさんでている)のだけど、いつ聞いてもどれを聞いても、ウィルの声があればそれが戻ってくるところの音だったりする。
Bonnie "Prince" Billy兼ウィル・オールダム、そしてパレス・ブラザーズ。そしてブラザーズの弟ポール・オールダムはこのアルバムにもちゃんと参加しております。どういう基準で名義を使い分けてるのかは実は良く知らなくて、初来日の時にはBonnie "Prince" Billy名義だったような気がする(そしてポールもちゃんといた)けど、やったのがBonnie "Prince" Billyの曲だけだったのかはよくわからなかったし。ただ、そのこんがらがった感じもまた魅力なのは確かです。
なんていってしまったらまるでいつも同じみたいだけど、しかしこの「The Letting Go」はすこし、毛色が違います。カウボーイ、アイスランドへ行く、といった風情のアルバムで、つまりアイスランドで録音されています。なんと初の海外レコーディングだそう。
ライナーにはビョークシガー・ロスらとライブをやり、「拘束のドローイング」のサントラにウィル名義で参加したことなどが切っ掛けなのではないかと書いてあり、プロデュースはそこで出会った(のではないか)とされるヴァルゲイル・シグルドソンさんが担当されています。
また、パレスブラザーズの二人とともにダーティースリーのジム・ホワイト、それからドラッグシティのレーベルメイトであるフォーン・フェイブルズのヴォーカル、ドーン・マッカーシーと、ベス・オートンのツアーでギターをひいていたというエメット・ケリーが参加して、なかなか分厚い音になっている。
ウィルの声は柔らかくかすれていて、その、微かに転がすような歌い方は、ボリュームをしぼって聞くよりも、ヘッドフォンでじっと聞くのに適している。そこまではいつものアルバムと同じなのだけど、今回はそこで背景を彩る音色の多彩さに気付かされ、それがアルバムに奥行きを与えてもいる。どんどん引き込まれる。
例えば「Lay and Love」で鳴らされる、リズムマシンのふらふらとただよう感じは、まるでアイスランドの氷が溶ける音みたいじゃないか。なんて、もちろんそれを見たことはないのだけど、ドーンの静ひつな声の質感が、みたことのない幽玄な景色のイメージを膨らませてくれる。そして、ウィルの声がイメージを受け止める。初めて見たとき、プリンスのでかさと気さくさに驚いたのを思い出した。