- 作者: 岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/01/25
- メディア: 単行本
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あまりにも身に覚えのある話が続くので、振り返って背後を確認したくなる。おそるおそる。―― どこかから頭をのぞかれてるのかもしれない。それとも私が独り言を言っているのか。もちろん記憶にないお話もたくさんあるのだけれど、それは既に、脳みそを食べられてしまったからなんじゃないか…、そしてきっと、この本を読み終えたその瞬間に、私は消されてしまうんだ…、なんて具合に、こわがってみるのも、布団に本を持ち込んで読む秘密の読書みたいに、すこぶる楽しい。
楽しかった。すべてが自分のことに思えてしまうくらい、一語一語ににやけながら抱え込んで読んだ。何度でも食べたい。和尚さんの秘密の壷みたいな本だった。
こんな妄想ができたなら、どんなにか面白いだろうと思う。でもきっと、それはこの人の文章で読むからこそ、もっとずっと格別に愉快なのだとも思う。
ちょっとおごらせてくださいよ、と絡みたくなるほどに楽しかったのだけれど(おこがましいにもほどがある)、今の今まで岸本佐「和」子さんだと勘違いしていたことを打ち明けたら、ねにもたれたり、するのだろうか。