かみちゅ!

第6話まで見たところで一度感想を書いたときは(id:ichinics:20070322:p1)、続きを見なくてもいいかな……なんて思っていたのですが、「負け組日記」のかしわざきさんにコメントいただいたおかげで興味をそそられたので、最後まで見てみることにした。

かみちゅ! 8 [DVD]

かみちゅ! 8 [DVD]

結論からいうと、ラスト2話はほんとに楽しめたので、見てみてよかった、と思っています。よかった。
6話から14話までの道のりは、私にとってはかなり苛々のつのるもので、そしてそれはほぼ10割方主人公のゆりえに納得がいかないということが理由だった。いちいち「かわいい」アングルで(一番多いのは「はうー」みたいな声だして指かんで上目遣い/次回予告の「ちゅっちゅっちゅう」にもまいる)ゆりえがクローズアップされるたびに、かわいいというよりはうっとうしく感じてしまう自分の心の狭さと向きあわされる。作品自体はとても好みなのに、主人公のキャラクターだけでこんなに萎えるのは初めてだ。
その最たる場面であった13話の「夢色のメッセージ」は、主人公ゆりえが1話まるまるこたつに入り続けているというお話。この回で、なんと彼女はテレビのチャンネルをかえるために「かみちゅ」(呪文みたいなもの)を使ってしまう。こういう展開は、主人公の身に災難が降り掛かる前フリ「バチあたりフラグ」だったりすることが多いと思うんだけど、この物語ではそのような破たんはおこらない。因果応報はありません。ゆりえはあくまでも安泰であることが約束されている動かない世界。そこにやっぱり、少しいらだつ。
しかし、安泰、と思っていた世界にも、唯一ままならないものがあって、はらはらさせられるのが第15話。
ここまで見てやっと、この物語はこの結末への助走、というよりジャンプの前に身を屈め続けていたみたいなものなんだな、と思えた。ゆりえにいらいらしてたことも忘れて、瞬間、心、重ねて、拍手を送りたくなる。ネガティブに振り切れていた自分の感情が、あっというまに手のひらを返す清々しさ。
この「かみちゅ!」がジブリ的であるといわれるのは何よりこの結末(地上波ではこれが最終回)が「耳をすませば」に似ているからだったのだろう。でも、DVDにはもう1話、収録されている。
このDVD版最終話については、かしわざきさんの書かれている

DVD版最終話「ほらね、春が来た」では最後までゆりえが一人の女子中学生であり続けているということがじわりと、どすんと際立っている
http://genki01.cc.hokudai.ac.jp/reo/diary/?date=20060405

という言葉がすべて言い表していると思います。最後の最後で、神様としてのゆりえではなく、ただの中学生であるゆりえがいるという構図は、なんというか、血が通っている感じがする。そしてコメンタリーを聞きながら「自分のささやかな思い出を拡大解釈してこの物語を書いた(大意)」という脚本の倉田さんの台詞がまた良くて、私にとっての「かみちゅ!」はとてもいい思い出になった。