光の海/小玉ユキ

光の海 (フラワーコミックス)

光の海 (フラワーコミックス)

人魚のでてくるおはなしが5つ収録された短編集。ここにでてくる人魚は、近くて遠くて、いることはみんな知っているけれど、でもあまり目にしない存在として描かれていて、人のようだけど人じゃない。その距離感がまず新鮮だった。
この人魚が、子どもにしか見えない生き物や、ロボットや、宇宙人、そういうものと異なっているのは、その位置づけが、まるで人と人との関わりのように、ひとつひとつの短編ごとに独立して描かれているからなのだと思う。
同時に、全ての物語で人魚は主人公を映すものとしてあらわれる。
なりたかった自分が、こうふと水面から顔を出すような、手を伸ばした先にあるきれいなものみたいなイメージが、この物語たちを切なくいとおしいものにしているなぁと思いました。
サーフィンするお坊さんの姿にやられた「光の海」、「波の上の月」は人魚の男の子と人間の女の子それぞれの気持ちを理解しあうことで外へ出ていくおはなし、「さよならスパンコール」は、人魚の友達の話、ここで描かれる女の子のかわいさは、ああ人魚だからこそこの絵になるんだなあってもので、「水の国の住人」は、人魚と人間の共存について触れつつ、最終話らしいすてきな終わり方。
一番好きなのは「川面のファミリア」。これは唯一、言葉の通じない人魚のお話なんだけど、その表情がとても魅力的だから、それだけでじゅうぶんに伝わる感じがする。結末がとてもすきで、この最後のひとコマが、読み終えたあともずっと、余韻としてのこっている。やわらかであたたかくて、いいものに触れたみたいに。

ちなみに作者の小玉ユキさんは、これが初の単行本とのことですが、デビューはCUTIE COMICだったらしい。ああー多分読んでたんだろうな。こういうとき雑誌感想かいておけば良かったって思う…。