プレステージ

監督:クリストファー・ノーラン
「奇術師」の感想を書いた時に、Shipbuildingさんから「小説を読んで知っている気になっている人も、いや、人だからこそびっくりできる」とコメントいただいてたのですが、ほんとその通りの映画だったと思います。
物語はボーデンとアンジャー(小説版ではエンジャと表記されていた)という二人の奇術師が繰り広げるプライドをかけたマジック合戦(ほぼ喧嘩)を描いたもの。小説版の複雑なイメージを、映画オリジナルの脚本に編み直しているその編集センスはさすがだと思います。映画を見終わった後にそれぞれの筋を比較してみると、まったく別の作品になっているのだけど、登場人物の印象だけは違えていない。だからこそ、まだ読んだばかりで原作が頭に残っていた私にとっては、混乱してしまわないよう、かなり集中力を要する映画でもありました。
「仕掛け」のある映画なので、なかなか内容に触れづらいのだけど、その仕掛け、謎解き自体が物語というわけではないと思う。ただ、奇術に人生を賭けてしまう主人公二人を追ううちに、それぞれに対する印象が全く異なって見えてくるのが面白かった。いわばポールポジションを奪い合いながら転がる二人の男を見ているうちにどっちがどっちかわからなくなってどちらも応援してしまうような感覚。私の「感情移入」なんて叙述次第であやつられるものなんだな。ということを、原作読んだときにも感じたような気がする。
大きな円を描いて閉じるようなイントロとラストも、素晴らしかったです。

「奇術師」の感想 → http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20070531/p1