鳥を持つ

鳥を持つ夢を見る。電車の中で、つい眼を閉じて、うたた寝にひきこまれていくときのあの、まぶたのうえをすべる光を手のひらに包むみたいにしてそっと、両手を柔らかく丸めて、鳥を持つ。少しくすぐったい。ぐるぐる喉を鳴らしているのが指先から伝わってきて頭までくすぐったいのはうれしい。けれど、壊れそうですこしこわくて、鳥の頭がひっきりなしにうごき、逃げようとしているのか、前へ前へ首をのばしているのを見て、ずっとこのまま、鳥を持っているわけにはいかないんだと思う。けれど、私の手のひらの温度と、鳥の体の温度が混ざりあうほどに、指を開くのが惜しいような、怖いような気がして、時折首を傾げる、その仕草を名残惜しく思いながら、
今度こそ、その暖かいうちに、うまく、手放さなきゃと思う。ちゃんと飛ばしたい。そう思った瞬間、指をはじくようにして跳ねた羽の勢いに驚かされながら、日の光と重なった鳥の影に眼がくらんで、天地反転したようなめまいとともに、やっと目が覚める。夢から抜けると少しあつい。まだ指が少し緊張している。