四次元ポケット

これまでの記憶を、書くということで頭の外に出そうとしたら、たぶんこの先の一生を費やしても足りない。ということを今日考えていた。
つまり、文字というのはもともと足りない部分のある道具だからどうしても影ができるし、しかしそれは足りずに成り立てるということでもあって、だからこそ、具体的な出来事というよりも記憶と考え中のことがごっちゃになったようなことを独り言みたいに書きはじめてくのはとても楽しい。うまくやれば、いくらでも時間軸から垂直にのびていけるような気がする。透明のレイヤーにどんどん色をのせていくような感覚で、視界をかすめた何かを、思い出すように、目を凝らすように、輪郭をとって、それまでの記憶をこれからの風景につなげられればいい。その感じは、楽器を触ることに少し似ているかもしれない。音楽になる、ちょっと手前の。
ただ、その素材はいつも私の見た、聴いた、触ったものの中にあって、だから外に出す、ということだけではいられずに、時間を先に進め、新しいものを見たくなるんだろう。
出来上がったものが、自分の思い描いたとおりに見えるかどうかはわからないし、それはすでに私の見たものとはかけ離れている。でも、もしかしたら誰かの記憶の中に、あるのかもしれない。だったら楽しいのにね、と思う。