遅刻しなかった日記

新学期になって、通勤時に使うバスは学生服で溢れている。路線に3つも学校があるせいで、バスに乗れないという事態がたびたびおこるのだけど、長い夏休みのせいでカンが鈍っており、今朝もわりとぎりぎりの時間に出たら、バスに乗れず、かなりあせった。駅について会社に電話をする。遅れるかもしれません、といい、遅れるつもりで電車にのる。
会社の最寄り駅について、地下から地上へでると、セーラー服の中学生と思しき集団がたまっていて、あちこちをむいて、信号まちをしていた。引率の先生は水色の服を着ていたから、体育の先生だと思う。体育の先生とはそういうものだ。数人の女の子が輪になって話しこんでいる脇にいる私の立ち位置は、まるでその輪を構成する一員かのようだった。彼女たちのピカピカとした生命力みたいなもののそばにいると、通勤ラッシュでぼろ切れのようにつかれきった気持ちがふくらんだ。日向で発酵をまつパン生地みたいに。
「東京だねえ」と女の子はいった。「そうだね」ともうひとりの女の子がいった。わたしもつられてビル群を見上げる。そうかここは東京か、と思う。少しだけ早足になって、会社に着いてみると、時間はいつもどおりだった。