translucent彼女は半透明 全5巻/岡本一広

発病の原因も治療の方法もまったくわかっていない
「そのかわり透明であること」以外健康面では異常はない
珍しいけど世間ではけっこう知られている病気
健康保険だってきく
そして多くの場合 身体の透明部分は拡がってゆくんだそうだ
1巻より

透明病の女の子と、彼女が気になっている同級生の男の子の物語。気持ちがすっとするような、おだやかでやさしい作品でした。
物語の鍵となるのは、やはり主人公の白山さんの透明病が進行してしまわないかということなんだけど、その病気が病であるという次元をこえて、彼女を彼女としてみる男の子、唯見マモルという少年がとてもよかった。ほかにも、出てくる登場人物はみんないい子で、透明になりたいと願っていた生徒会長の、あのストイックなまでの誠実さにも、うたれるところがあった。
透明になる、ということは自分の存在自体があやうくなるということでもある。私は本当にいるの、と白山さんは自問する。
しかし、物語が続いていく中で、関係や、記憶、そういうものの中にも白山さんの存在があることがちゃんと見える。
そして「触れる」ということの特別な感触の描き方には、この物語だからこその切実さがあって、ぐっときます。この形の外にでられないという意味では、透明な白山さんもマモルも同じで、でもだからこそ、手をつないだときの、その感触で伝わることがある。
あまずっぱいなああ、とにこにこしちゃうようで、最後はしっかり涙腺を刺激されてしまった。

「あたしが全部透明になっても、あたしの顔、忘れないでね」