果てしなき渇き/深町秋生

果てしなき渇き (宝島社文庫)

果てしなき渇き (宝島社文庫)

ダイアリは愛読しているのに小説読んだことないってどうよ自分…と思い、ようやく買いました。なんだか動機が不純な気もしますが、そういうの抜きに、とても面白かった。
行方不明となった娘を追う父親と、その娘に恋をしていた、いじめられっこの少年。そのふたつの視線から交互に描かれるスピード感のせいか、久々に時間を惜しんで読み、あっという間に読了してしまった。この感じは、昔エルロイにはまったときに似てるなーとか思ったらあとがきにそんなこと書いてあって、なるほどとか、思いたかったけれど、その類似点については、エルロイを読んだ記憶が薄れ過ぎていてわからなかった。
ともかく、読者の第一印象を裏切っていくような人物描写が、そのまま物語の勢いとなっているせいか、登場人物それぞれの印象が濃く、ページをめくる手を緩めることなくすんなり頭に入る。これはサスペンスとか読んでいるときにはなかなか味わえない感覚だと思う。それから、物語の中心にいる加奈子という少女について、終盤までそんな完璧な少女がいるだろうかと訝りながら読んでいたのだけど、その予想を裏切るでもなく、肯定するでもなく、その存在をあるものとして読みおえられたのは、うれしかった。
余談ですが、いじめられっこの物語として「コールドゲーム」と「きりんぐぱらのいあ」をちらっと思い出す。この2作品についてはよく思い出すから、私はもしかしたら、復讐ものがすきなのかもしれない。