きょうはとても寒いので

冬の好きなところを、思い出してみる。
あたたかい部屋、あたたかい食べ物。鍋を囲むのもいいし、やかんでお湯を沸かすのも好きだ。お湯が沸く音を聞くと思い出すのは、別ににているというわけじゃないけれど、船の、ボーッという汽笛の音で、黒くて大きな船が、ゆっくりと旋回する、そんな光景を思い描きながら、コーヒーを入れる手は、寒さにかじかんでいる。
カップをもつ手のほどける感じと、冬になるたび買い替える暖かいスリッパ。朝の寒さはほんとうにつらいけど、うー、とかいいながらストーブの前に立つ自分はなんだか笑えるし、夜の布団に潜り込むのは安心。
コートは重いからおっくうだけど、マフラーが巻けるのは嬉しくて、今年の冬も新しいの買ってしまった。
曲り角の、たき火とかね。遠くの電車の音が聞こえるのは、風の向きがかわるからだって昔聞いた。東京では珍しいことだけど、雪が降ると思い出すのは「やはらかに積れる雪にほてる頬を…」ってうたのことで、乙女だな、と、思う。その乙女さが欲しかった、と、思う。
しんとした夜と、昼になればすぐにとける、あのまぶしさが懐かしい。土を剥がして霜柱を見たいし、見たあとは踏みたい。池があれば氷が張ってないか確認するし、なにより、冬と聞いて最初に思い出すのは、空気がつめたくて、きれいな感じがするところで、それはもう近くまできてる。
今夜はほんとうに寒いです。ホットワインしようと思ったのに赤ワインがないんだ。