「in due time」

ライブ会場の暗さと大きな音はあんしん、すみっこに座り込んだまま、発売日の朝に開封したてのアルバムで、もしくはいつかのマリンスタジアムで、聞いた曲のことを考えている。あの、皮膚の内側に触れるような柔らかい音には、例えば水に潜る時みたいな息苦しさもあって、で、
そういえばあの日はかなしかった。仲の良かったあの人が、遠くに越してしまう日で、なんでわたし、こんなとこで仕事してるんだろーなー、ってぐらぐらしながら、カッターでトレイとカバーの隙間を切り、親指で開くように、透明のフィルムを剥がす。足元におちる帯。はじめてCDケース開くときの、あのささやかな高揚感は、いつか懐かしいものになってしまうのかもしれないけど、
なんだかわたし、けっこう一生懸命だなあ、と思う。唐突に、けっこー、一生懸命なんじゃないですか、と、笑い出したくなって、
そういうのぜんぶあほらしーというか、ばかじゃないのって言われたときように身構えてた部分みたいなの、が、ちょっと折れそうになって、っていうかとっくに折れてたのかもしれないけど、
でも、それを最初に言うのって、つまりは、いま「ばかじゃないの」って言ってる、自分なんだよなあ、と、思う、このタマネギ状の自意識を、音楽はほどいてくれるような気がする、こともある、
なんて、ややこしいこと書いてると、とりあえず机の上のもの、全部払い落としたくなったりもするんだけど、
あっ、という間だからね、なんでも、あっという間にすぎてくから、降参したくなるまでは、飲めるとこまで飲むよ、とか、ようするに、負け戦だって、負けるまでが戦だよね、ていうこと。