鳩とバス

目が覚める。携帯を見る。寝返りをうって二度寝の誘惑と数秒戦い、起き上がりストーブをつける。もう一度布団に戻り、ストーブがつくのを待つ。
膝を抱えて待ちながら、携帯に残っていた書きかけのメールのこと考える。それは宙に浮かんだままの声みたいで、ボッ、とついたストーブの音に、吹き飛ばされてきえる。今日は晴れ。いつだったか、小さな映画館で、友達3人で膝を抱えて見た映画のラストシーンのことを思いながら、バス停まで歩く。
並ぶひとのほとんどが、バスがくる左手の道を眺めている。11月も終わりかけの朝7時、いまだ朝焼けが広がっている空の端は、とてもまぶしくて、
その、まぶしさに顔をしかめていた全員がふと顔をあげた、瞬間、空を横切るのは鳩の群れ。
ほんの1、2秒。やがておもむろに、俯いたり左手の道に視線を戻したり携帯を取り出したりと、散り散りにわかれながらも、あの瞬間、視線の重なった感触に、目の奥がすこしひりひりする、冬の朝。
バスに乗り込むひとみんな、新しい顔をしている。