ワルツを踊れ Tanz Walzer /くるり

やっとちゃんときいた。
とにかくメロディとアレンジのすばらしい、上質の…なんて言葉をつかうとすごく偉そうだけど、たとえば長いこと使い込むつもりで買うお気に入りの品みたいに、丁寧につくられた上質の、アルバムだと思いました。ウィーンでレコーディングされたということで、ロックとクラッシックの融合、とか、そんな前フリよりも単純にメロディのよさが際立つアルバム、とかいろいろ評判は聞いていたのだけど、個人的には、くるりというバンドは、アルバムごとにまったく違うアプローチを選択しながらも、最終的にくるりでしかない音を作り出す、個性のバンドなのだなあと感じたアルバムでした。(そういうとこちょっとプライマルスクリームっぽい気がします。ま、音は全然違うんだけど。)
ストリングスはそれほど目立たない、というか、楽曲にうまくなじんでいるので、アルバム全体のイメージとして残るのはやはりメロディなんだけど、それでいて、耳で追っている音が、気付けばストリングスだったりする。正直なことろ、くるりってこんなに、メロディメーカーだったかなあとか、思ってしまった。そのくらい、1曲1曲に印象的なフレーズがあるので聞いていてあきないし、1曲づつ抜き出して聞いても輪郭がはっきりとしている。
しかし、何よりも印象的なのは、アルバム全体を覆う、この、おだやかな力強さだと思う。

明るい話しよう
暗くならないうちに
この恋が冷めてしまわないうちに
「言葉はさんかく こころは四角 TRIANGLE」

天然コケッコー」の主題歌だったこの曲、歌詞の視線が恋人のようで父親のようで兄のようで友だちみたいで、ちょっと不思議なんだけど、その曖昧な、でもやさしい印象はこのアルバムの力強さに似ている。