- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2007/12/18
- メディア: 単行本
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「ブラッドハーレーの馬車」を中心とした、短編が集められたこの作品は、正直いって相当に、陰惨な物語だった。そう感じるのはここに描かれている出来事についてだけでなく、その先の影だけ提示して終わるような物語の幕切れだったり(特に七話ラストのコマとか)、絶望の淵にある少女へ「つい」希望を与えてしまうことについての葛藤だったり、誇らしげな笑顔を美しく、描くこと自体だったりする。
そして、その希望と絶望のコントラストに美しさを見る主体が、完全に物語の外におかれているからこそ、手放しで面白いとはいいづらい作品になっているのだけど、
それでも、魅力的な作品だと思う。その「魅力」の感じ方は、作者のそれに共感するというのではまったくなく(それは単純に視線の問題なのかもしれないけど)、この最低の中にも典型を見てしまう物語というものの普遍性というか、それをこれでもかと塗り重ねることで、物語自体よりも、その外にある視線が色濃く感じられるようなこと、だったりする。感想をいうのが難しい。