としをとる

彼女と結婚がきまったのだという男友達に、お祝いを言いに行った。やあやあ、どうもどうも、なんて具合にぺこぺこと挨拶を交わす。その仕草はお互いに年取ったなーって感じなんだけど、
「結納、って、あのあからさまに金を出すところが*1人身売買っぽくて嫌だったんだけど、いざやってみたら、よかった。家と家が結びつくって、あーこういうことなんだな、とか、なんか感動しちゃってさ」と話す彼の表情に、かつての、あの居心地の悪そーなところはもうなくて、ああ大人になったんだなあと思う。その「大人」って何なの、と訊かれてもうまくこたえられそうにないけれど、「おれ覚悟した」と言った、その晴れやかな表情は、男の子のようでもあった。そんなふうに、
年取ること、大人になること、男の子(あるいは女の子)であること、はどれも違うけど、同時にあることもできるんだなと思う。
結婚を機に新居に越したらしく「最近は家具選んだりするのが楽しくって、仕事してても頭の中の半分以上はカーテンのこと考えてる」などと溶けそうに笑い、でもすぐに「最近なんもしてない。映画も見てないし本も読んでない。でも久しぶりに皆に会ったらなんかちょっとあせってきた」と言ってみたりもするんだけど、でもちゃんと、満足そうな顔してるから笑ってしまう。
やっぱり、しあわせなときは、無防備に笑ってるのがいいなと思う。自分の好きな人が、そんなふうに笑ってくれたら嬉しいし、そもそも、くるかもわかんない不安に身構えて過ごすより、ノーガードで不意打ち食らうほうがまし、なんて、目の前の友人より、むしろ、ついくよくよしがちな自分への自戒をこめつつ、考えていた。
「で、○○(私)はどうなの最近」って、一足先に帰ろうとしている私を呼び止めて話しだす、間の悪さに笑いつつ、楽しいよーと答えて手を振った。
そんとき思いだしてたのは、このまえ見た写真の、自分の顔。

なんの脈絡もなく、ふいに、もうちょっと人生が続けばいいなあとか思った。あんまりそういうこと意識して考えたことなかったけど。

*1:実際お金を出して何をやるのか私はよく知らないのですけど