東方見聞録 − 市中恋愛観察学講座/岡崎京子

東方見聞録―市中恋愛観察学講座

東方見聞録―市中恋愛観察学講座

1987年にヤングサンデーで連載された作品の初単行本化。
ハワイに住む海外育ちの女の子が、おばあちゃんのかつての恋人の孫と一緒に東京見物をしてまわるお話。岡崎京子さんの作品で、まだ単行本化されてないものがあったっていうのも驚いたけど、作品自体よりも、描かれているのが自分の知っている東京だってことが、不思議に思える漫画だった。なにしろもう20年も経ってる。20年前の東京を今として読んでしまう居心地の悪さというか、やっぱり岡崎さんの漫画って、常に「今」なんだよなあってことを思った。つまり、懐かしく読む雰囲気じゃない。まるでテレビをつけたらどのチャンネルでも昔の映像が流れてるみたいな気分だ。
正直な感想をいえば、まだつたないところもたくさんある作品だと思う。のめり込んでは読めなかったし、私の好きな/好きだった岡崎京子のあの迫力のようなものはまだない。ただ、例えば

学校と家の往復なんて退屈じゃない。
たまには風景を見に行こうよ。

なんて台詞に、確かに憧れただろう自分がいたことは確かだ。
例えば私がはじめて岡崎京子を知ったのは、塾通いしてた小学生の頃、授業さぼって駅前のワゴン売りの古本屋で立ち読みした「東京ガールズブラボー」だった。あのときのわくわくする感じ、この中に自分もいるって感じ、なにかを無責任に願う感じ、あれを斜に構えることなく受け取ってしまったことで、引きずられていった部分も、確かにあると思う。
岡崎京子が描いた年代があるとしたら、完全に同時代ではなく少し上だからこそ、それは私の年代でもあった。そして、それを追い越してしまったことを思うと、やっぱりすこしさみしい。