「オフシーズン」/ジャック・ケッチャム

オフシーズン (扶桑社ミステリー)

オフシーズン (扶桑社ミステリー)

『隣の家の少女』を読み終えた後のどんよりした勢いで読みはじめた『オフシーズン』ですが、わりと素直に楽しんで読むことができました。かなり恐ろしく残酷な話なんだけど、ページを捲る手を休ませない勢いがあって一気に読んでしまった。その勢いはもちろん『隣の家の少女』にもあるんだけど、この読後感の違いはいまいち説明できない。
物語は、裏表紙にあるあらすじの言葉を借りれば「〈都会族〉対〈食人族〉の死闘」を描いたもの、なのだけど、どちらを「善」として描くのでもないその視線こそが、この作家の特徴なのかもなぁとか読み終わってから思ったりした。
物語の中では誰もが善悪ということからかけ離れたところにいるように思える。善を行えば報われるといった「物語」はそこにはない。それを象徴していたのがマージーという女性の心理でもあったように思う。
あとがきによれば初めて出版された時には削除されてしまった、という結末(日本語訳はオリジナル版)にも圧倒された。
そして、ジャック・ケッチャムを手に取った流れで、今ははじめてのスティーブン・キングを読んでいます。