- 作者: 新井英樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/01/06
- メディア: コミック
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私は、リンの物語はあくまでも(前作「SUGER」から描かれてきた)千代を巡る色恋を中心にまわっていると思っていたし、最後の6ページはあくまでもおまけだとしたら、実際そのように終わったのだと思う。ただ、その閉じ方があまりにも切なすぎた。
天才・・・・って/病気だから/私は・・・・嫌だ
千代はアイリーンや中野靖子のような、新井英樹の描くヒロインの典型に近い印象はあるけれど、彼女たちのように物語の中心にいるのではなく、あくまでも外側にいて、常にリンを突き放してきた。
最終巻はほぼ立石戦をメインに構成されているのを見ても、リンを受け入れる場所はもうリングにしかなくなっていた。そして、そのリングさえもリンを受け止めきれずに、物語は幕を閉じたように思う。
遠くて近寄り難くてまぶしい存在であることを、たぶんリンがのぞんだわけではないからこそ、リンは天才なんだと思う。それは「ザ・ワールド・イズ・マイン」で描かれたヒグマドンの姿にも似ている。
でもそれじゃあ、リンはこれからどうなるんだろう。そんな詮無いことを考え込んでしまった。
「SUGER」から引き続き描かれてきた「石川凛」の物語が、こういう風に終わることを私が意外に感じたのは、最後までのんきに千代の存在を頼っていたからだ。千代ならリンを天才じゃないただの人にできるんじゃないないかと期待していた。だからつまり、私は天才から「降りる」瞬間が見たかったのかもしれない。
でも、上記に挙げた千代の言葉も切実なものだと思えたし、それが普通だと思う。
読み終えてしばらく経つ今も、リンの圧倒的な存在感はしつこく残っていて、これを千代はどんなふうに持ち続けていくのだろうか、と思った。