雪の日

雨の日に布団から窓の外を眺めるときの、あの後ろめたさと交じり合った多幸感のことを思いながら外へ出る。息が白い。先日の陽気が嘘みたいに寒くて、空気を暖めるわけでもない小さな暖房では心もとない日が続くのだけど、これを乗り切ったら春だと思って1日ずつ、積み重ねては崩される終わらない冬のことを想像したら恐ろしくなったので早く春がくればいいと思う。

今日は、いつもの喫茶店や午後に行った図書館、仕事帰りの電車でも、あちこちに腕を組んで目を閉じている人を見かけた。確かに、あたたかな室内から白くかすんだ窓の外を眺めていると、なんだか意識が遠くなるというか、景色がゆがむというか、朦朧とした意識の中で、もしかして人間も昔は冬眠していたんじゃないのとか思う。そのまま気持ちよくウトウトして寝過ごして、電車をおりると雨は雪になっていた。

雨が降り始める瞬間って、いつも少しほうれん草の匂いがするんだけど、雪の降りはじめには匂いよりも先に音があるような気がする。さりさりと、まばらに落ちて溶ける雪の感触は、やがてその雪が軽くなるほどに音を包んで遠のいていく。あの、音が切りはなされる感じまで、今回は積もるだろうか。
…などと考えていたら、明日も仕事行くこと思い出してとてもめんどくさいので、1日冬眠になればいいと思います。