眠る前

夜、ぎりぎりまで本を読んで寝落ちする、とかでなければ、電気を消して肩まで毛布に入って眠るまでの数分は、たぶん多くの人にとって、考え事をする時間なんじゃないかと思う。
例えば明日会う人のことだったり、着る服のことだったり、仕事のことだったり、朝ご飯のことだったり。
朝ご飯といえば味付け海苔が食べたい、アジの開きと、あと卵かけご飯。そういえば合宿の朝ご飯で、食堂の机の上には卵が山盛りになった皿があって、やったー卵かけご飯し放題じゃん、なんて言いながら割ったら、それはゆで卵だった、なんてことがあったなー、とか、
そんなふうに、目を閉じて思い浮かんだことから、しばらく考え事をしていると、気づけば次の日になっている。だから、眠っている間に見る夢はその考え事についての話になることが多い。

上に書いた『ペット』に、ヤマとタニという概念が出てくるのだけど、物語の中で、そのヤマをタニで囲って守ることを「鍵をかける」と説明する場面があった。
「ヤマ」と「タニ」が自分にあったとしたら、それがどんな記憶なのかはよく分からないけれど、考え事を始める感覚は、そのヤマを探す場面に、ちょっと似ているような気がする。それは記憶というよりは、いま考えてることが何なのかを見る感じに近くて、目を凝らしているうちに眠ってしまうし、目が覚めたら大抵忘れているのだけど、
たまに、まぶたの裏の光みたいに、そこでみた風景の感触が残っていたりもする。よく見えないけど、ちゃんとある。
って、そんなわけで、今日の朝ごはんは卵かけご飯でした。麺つゆとラー油で。