「ばかもの」/絲山秋子

ばかもの

ばかもの

小説で、しかも三人称なのに、主人公の話を聞いているみたいな気がする本だった。
作品中に、Yes の「ラウンドアバウト」という曲がでてくるのだけど、このお話はまさに、主人公のヒデが「迂回する」話だったと思う。冒頭シーンから急転直下、で、読んでいてけっこうつらい所もあったのだけど、回り道をしてたどり着いた風景に、少し救われた気持ちになった。
で、この主人公のヒデが、まんまTheピーズのはる君みたいでね。もちろんモデルってわけじゃないと思うんだけど、喋り方とか、ちょっとしたエピソードに近いとこがあって、作者のピーズ好きがこれほどまでに出てるのは「逃亡くそたわけ」以来なんじゃないかなと思う。
特に最後の会話で、なんかもうたまらない気分になったんだけど、これはつまり「君と最悪の人生を消したい」ってことだよなと思う。

「ばかもの」読みおわったらピーズ聴きたくなって、とどめとどこへも帰らないを通して聴いた。そしてあらためて、「ばかもの」はどこもかしこもピーズだなあと思う。
そんであらためて、「迂回」ってのはいいテーマだなと思った。