昔話/ロイヤルホストのパーコー麺

19歳の誕生日だった。Fと2人で遊ぶのはその日がはじめてで、とりあえずお昼に待ち合わせしたはいいものの、目的地はなく、ぶらぶら歩いているうちにおなかがすいて、ちょうど通りかかったロイヤルホストに入ることにしたんだった。
ファミレスでロイホがいちばん好きなんだよね、なんて話をしながら、Fはパーコー麺、私はホットケーキを頼んだ。
パーコー麺て何、って訊いたのを覚えている。肉ののったラーメンみたいなやつだよ、へー、そっちこそ昼ごはんホットケーキでいいの、ロイホのホットケーキ好きなんだよね、なんていう話をして、
休日の昼下がりということもあってか、店内は家族連ればかりだった。混んではいなかった。窓の外、夏の強い日差しに照らされ、駐車場に並んだ車たちの鼻先が光っている。それを眺めながら、私は水を飲んでいた。
やることないね、と言うと、Fはちょっと不機嫌な顔をして黙った。そのままパーコー麺とホットケーキが運ばれてきて、私たちは黙々とそれを食べた。パーコー麺の肉はメニューで見るより小さかったので、ひとくち食べたいとは言わないでおいた。
食べ終えてから、どうしたんだったか良く覚えてない。夕方のバイトまで、たぶんまたぶらぶらと歩いたのだと思う。友だちの話とか、今度いくライブの話なんかして、途中で何か飲んだかもしれない。
今日誕生日なんだ、ってのはなんかお祝いの言葉を強要してるみたいで言えなかったんだけど、
その翌年、Fにケーキをご馳走になりながら、そういや去年はパーコー麺食べたよねえ、って言ったら、なにそれ誕生日くらい主張すりゃいいのにさーって怒られたのはちょっと嬉しかった。10代の頃は控えめだったんだよって、20代になった私は答えた。

なんてこともあったなってのを、こないだロイヤルホストに行ってパーコー麺がなくなっているのに気づいて思い出しました。
ちなみにパーコー麺はいまだに食べたことがない。