アウトレイジ

監督:北野武

黒社会もの、中でもファミリーの話になると特に好きなのでとても楽しく見ました。
見終わってすぐには、ストレートにヤクザ映画だなと思ったのだけど、そもそも自分はヤクザ映画というのをあまり見たことがない。「アウトレイジ」に関して言えば、それが暴力や小指を詰めることにあるならば十分だし、義理人情にあるならば違うだろう。でもそこが面白い、と思ったし、「全員悪人」というコピーがあるからこそ、誰か例外になるのだろうかと疑いながら見るのが面白かった。裏切って当たり前、だけど、もしかしたら裏切らないやつがいるかもしれない。
その期待を一身に背負うキャラクターが、椎名桔平演じる水野だったと思う。
彼のボスが警察署で取調べを受けている間、外で煙草を吸いながら待っている彼のあのいたずらっぽい笑顔。そして中華料理屋での、これから起こる暴力の表面張力の中でにやつくあのふてぶてしさ。
今まであまり見る機会のなかった俳優さんなのだけど、暗がりの中で彼の目に光を当てたシーンの色っぽさなど、このアウトレイジという映画の中で、水野の存在感は圧倒的だったし、格別に格好よかったと思う。
それから鈴木慶一さんの音楽もとてもよかった。
物語はいたってシンプルながら、印象に残る場面をひとつずつ水に沈めていくかのような映画だと思いました。

ところで、巻き舌する人が少ないなあと思ったのだけど、ヤクザ映画の中では、啖呵といえば巻き舌って文化はもう廃れているのだろうか。