告白

監督:中島哲也

とても面白かったです。
もし先に原作を読まずに見たとしたら、もっと驚く映画だったのではないかと思う。その状態で見てみたかったなとも思うけれど、原作を読んだばかりで見たからこその面白さも十分にあった。
嫌われ松子の一生」を見たとき、私は監督の視線がいまいちどこにあるのかわからず、見ていて少し居心地が悪かった。でもこの「告白」はその冒頭シーンから、監督の視線がはっきりと、物語の外にあるのだということがわかる。松子でもきっとそうだったのだと思う。監督はけして登場人物に寄り添わず、むしろ登場人物に気持ちを重ねようとする視線に鏡を向けてくるような、撮り方をする人なんだな、と思った。
それはたぶん原作がやろうとしていたこととも重なっていて、その汲み取り方、映像にするうえでの補足と削除の仕方の的確さは、ちょっと怖いくらいだった。
監督特有の、おとぎ話のような画面の作り方も、物語とよくかみ合っていたと思います。

過程に面白さがある物語なので、ネタばれせずにあらすじを説明するのがむずかしいのだけど、登場人物それぞれの思惑が明かされていくその語り口も、中学生の子どもたちの、自分と他者の境目が曖昧な感覚を描いた作品としても、すごいと思いました。
世の中には様々な不幸がある。そして様々な不幸はすでに語りつくされてしまっている。しかし、悲しい話を聞いて涙するのと、その物語が自らのものになるのとじゃまったく話が違う。この物語には何人か主人公がいるのだけど、そこに共通するのは、その、物語が裏返る瞬間だと思った。
私がもっともぐっときたシーンは、「復讐者」である主人公が泣いて、うずくまって嗚咽し、その次の瞬間には、その涙を他人事のように振り切って立ち上がり、歩き出すシーンだ。
ここで彼女は自分の不幸を「泣ける物語」にすることを、きっぱりと拒んだのだと思う。