ノルウェイの森

監督:トラン・アン・ユン

年末に見ました。
トラン・アン・ユン監督らしい、画面のきれいな映画だったと思う。そしてそれは、私にとって村上春樹の小説を読む楽しさに似ているとも思った。
私は村上春樹の小説が好きで、高校生くらいの頃は特に熱心に読んでいたのだけれど、その楽しみはそこにどんな物語が繰り広げられるのか、ということよりも、文章を読むこと自体に楽しみがあったように思う。というとまるでお話が面白くないみたいだけれど、たぶんそういうことでもなくて、ただ、あのリズムで、このような主人公がいて、彼がどのように考えたか、ということを読むのが楽しかった。だから私はいまだに、一人称で書かれていない村上春樹の小説にはあまり魅力を感じないのだとも思う。
しかし映画というのはカメラという視点がある限り、一人称にはならない(たぶん)ものだ。
だから、映画「ノルウェイの森」のワタナベは、客観的に見れてしまうし、客観的にみると、信用ならないというか、言ってることとやってることが矛盾してる気がするというか、率直に言っていけすかないという感じだった。
もちろん小説に描かれているワタナベもそうだった気はする。今読んだらそう思う気もする。
ともかく、映画にある魅力はその小説の一人称マジックみたいなものとはまったく別の、むしろ監督の視線みたいなものにあるのだと思った。
ただ、主人公のモノローグや台詞が小説そのままだったりする箇所もあり、それがどうも日本語の声として聞くと気恥ずかしく集中できなかったのが残念。もしこれを、外国語の吹き替えで見たらかなり印象が違うだろうなと思い、吹き替えと字幕の印象の違いということについて考えたりもした。
後はなんといっても、セックスシーンが長いのが落ち着かなかったですね!

この回想シーンが一番好きでした。
キヅキとハツミさんのアップがとても美しかった。