ドラゴン・タトゥーの女

監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:スティーグ・ラーソン
映画公開前に原作を読み、とても気に入ったので風邪気味にもかかわらず公開日に見に行ってしまいました。面白かった。見終わってから158分もあったというのを知ったのですが、全然長いと感じなかった。そのくらい楽しめました。
ただ、自分は原作を読んでから見に行くまでが短かかったこともあり、ほぼ全編原作と重ねながら見てしまったので、ミステリーとして映画だとどう見えるのかはわかりません。でも原作を好きな人にはけっこう楽しめる作品になってたんじゃないかなと思います。
それは、原作の魅力のわりと大きな部分が、ミカエルとリズベットという二人の主人公のキャラクターにあるからだと思う。

物語は、ジャーナリストのミカエルが名誉毀損の罪で有罪判決をくだされるところから始まる。そのミカエルに仕事を依頼しようとしているある人物から、彼の身辺調査を頼まれたのがドラゴン・タトゥーの女であるところの天才ハッカー、リスベットです。原作は、2人の物語が併走している序盤はちょっと単調だなと思いつつ読んでいたのですが、2人が出会った瞬間から、俄然物語が輝き始めた気がしました。
本の前書きに「スウェーデンでは女性の十八パーセントが男に脅迫された経験を持つ」とあるとおり、物語中に起こる事件の多くは女性に対する差別的な暴力であり、作者のテーマにはそういった暴力に対する怒りがあったのだろうと思う。映画では言葉で説明しなかったけれど、ある事件の後にリスベットが新しいタトゥーを彫るのは「ある出来事を忘れないようにするため」と彼女自身が語っています。
けれど、リスベットとミカエルの信頼関係が築かれていく様子には、さわやかといってもいいようなときめきがあった。
ミステリーとしては、大きなヒントが他人から台詞で提示されるところなどはあまり好きじゃないです。構成としても、ここでおわってもいいだろうなって山場がラストに3つくらい立て続けにあったりするんだけど、ミカエル&リスベットという相棒の物語としてみるとこれがいいって思う。
そういうところも含め、フィンチャー版「ドラゴン・タトゥーの女」はかなり原作に忠実だったと思います。むしろ原作から削られている部分は、ミカエルとリスベットの物語にするために削ったという印象でした。

ミカエルは女たらしだけど誠実で、上品な仕草も魅力的だった。特にぐっときたのは、新聞社に写真を探しに行くときにメガネをずらしてるとこ! あと猫を撫でてるとこ! ダニエル・クレイグさんはいままで特に好きな俳優さんというわけではなかったんだけど、俄然好きになりました。
そして、痩せぎすの猫背で眉剃りモヒカン(髪は立ててないときが多い)のリスベットは、無愛想で表情も乏しいんだけど、手を差し出すミカエルに対する、不器用な愛情表現がたまらなくかわいかった。特にぐっときたのは朝食つくるとこです。キッチンに腰掛けてるところとか、なんか猫みたいでよかった。
できることなら続編も、是非この主演コンビで見たいと思う。そのための、原作に忠実なラストだったのだと思っています。