「ゴーグル」/豊田徹也

ゴーグル (KCデラックス アフタヌーン)

ゴーグル (KCデラックス アフタヌーン)

読んでる間、漫画ってほんとに楽しいな…ってしみじみするような贅沢な時間を過ごさせてもらいました。
もったいなくて1話読み終えるごとにいったん閉じながら読んでたんですが、それは大好きなお菓子をちょっとずつ缶から取り出して食べて、でもチラチラその缶を眺めてしまうような、そんな気分でした。
単行本デビュー作である「アンダーカレント」からずっと、豊田徹也さんの描く登場人物は「社会」から片足を踏み出した人、もしくはそのような佇まいであることが多い。さみしいと頑固とそれらを受け流す飄々とした感じがどの作品にもあって、それがたまらなく好きです。
この本には「アンダーカレント」以前に発表された「ゴーグル」という短編が収録されているのですが、絵柄も構成も、この時から完成されているのがすごい。
それから「アンダーカレント」と「珈琲時間」にも登場する探偵山崎が短編「ミスター・ボージャングル」で再び登場するのも楽しかったです。
特に良かったのは、「ゴーグル」の前日譚でもある「海を見に行く」です。
大人が子どもに対して、人生とはみたいな話をするのって、でもあんまり伝わらないんじゃないかな…って思うことが多いんですけど、このお話の、おじいちゃんの言葉は、最後まで読んでそういうことか、って思ってすごくまっすぐに受け取ることができました。

これまでの感想

「アンダーカレント」http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20060220/p1
「珈琲時間」http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20091226/p1