「009 RE:CYBORG」

監督:神山健治
公開翌日に見に行ってきました。
神山監督の新作ということですごく楽しみにしていたし、面白かったんだけど、正直なところちょっと良く分からないところもありました。
この作品は、009シリーズ「天使編(未完)」とその構想を改め描き直したと言われる「神々との闘い編(同じく未完)」を下敷きにしているようです。

人類とは何か、悪とは何か、正義とは何か。さらに、神とは何か。哲学の域にまで入っているこの作品の、その「先」を、自分流かもしれないけれど作ってみよう。そういう思いがあって、未完の2編から『009 RE:CYBORG』を作っていきました。
http://www.nikkei.co.jp/category/offtime/eiga/interview/article.aspx?id=MMGEzu001025102012

私は、実家にあったコミックス数冊と、子どもの頃に再放送のアニメを何回かみたことがあるだけで、009シリーズについてはほとんど知りません。顔と名前と能力が何となく分かるけど、分からない人(ピュンマ…)もいる…という程度。
だから以下はほぼ009を知らずに見た感想です。

舞台は近未来、テレビのニュースでは世界各地で起こっている無差別テロ事件について報じている。それを見ている009であるはずの島村ジョーは、なぜか自らもまた、六本木ヒルズを破壊しようとしている…というところから物語がはじまります。
彼は009であった記憶を思い出す事で、ビル爆破をしようとしていたのは、「彼」のメッセージを受け取ったからだと思い出す。

この壮大なお話をしらけてしまわないように描くってものすごく難しい事だと思うんですが、この「009 RE:CYBORG」はその点では申し分なく、どこかハリウッド映画を見ているような気分になる迫力のある絵柄でした。
でも、例えば押井守監督の「イノセンス」をわたしは2回見に行ってDVDも持ってるくせに、実は内容をちゃんと理解しているって言えない気がするんだけど、でも好き!って思うのはやっぱり演出が好きだからだと思うんですよね。
009 RE:CYBORG」についてはフル 3DCGの新しい境地という凄みは感じられたものの、追いかけることにいっぱいいっぱいで、画面の端々を見る楽しさみたいなものを味わう余裕はあまりなかった気がする。

そして気になるのは、この映画を見に来る人の多くは、00ナンバーのサイボーグたちが集結する物語を期待していたんじゃないかってことです。
しかし映画のなかでは全員が集合して戦うシーンはなく、彼らがサイボーグであることは、描かれているテーマとはあまりつながっていないようにも感じられました。
そして物語の核となる「彼の声」の意味については、「東のエデン」を経てここに至るというのは映画を見た後で考えてみれば納得がいく気がするものの、この作品で初めて神山監督の作品に触れる人にとっては、少し説明が足りないのではないかと思います。
少なくとも、主人公たち以外の声を聞いたものの視点は必要だったんじゃないかな、と思いました。

それでもサイボーグ達の戦闘シーンはたいへんかっこよく、特に終盤の見せ場であるジョーとジェットの場面は、マクロスプラスのイサムとガルドのあの場面を思いだしてぐっときたりもしました。

個人的に、以前の神山監督は押井守監督の良き翻訳者のようなイメージをもっていたのですが、その段階はとっくに通り過ぎたのだろうなと改めて思いました。
楽しみきれていないような感じがするので、もう少しいろんなインタビューを読んだり、原作を読んでみたいと思っています。