「赤パン先生!」1、2巻/安永知澄

赤パン先生! 1 (ビームコミックス)

赤パン先生! 1 (ビームコミックス)

臨時教員として小学校で水泳を教えている“赤パン先生”を間に、彼に水泳を教わる小学四年生の妹きら、彼女の姉である中学校教師の庸子の視点を交互に描く物語。
きらが感受性豊かな少女であることもあって、きら視点のお話で描かれる生々しさとみずみずしさはちょっとこわいくらいの迫力がある。友だちに好きなものを否定されたときの絶望感とか、楽しいことと後ろめたいことの狭間にある感じとか、ほんとそのまんまの感情で出てきて、こわれものみたいな感じがする。
対する庸子の、何か思い悩んでいる様子は何なのだろう、と読みすすめていくと、2巻になって彼女の子ども時代の話が描かれ、庸子は「そのまんまの感情」を出すのが苦手な子なのだとわかる。たくさんの我慢をしてたくさんの意地をはって、やっと得た場所。そこにきらが現れた時のお話はまだ描かれていないけれど、庸子から見た物語は、長女と次女の影と光でもあるのかもしれない、。
読者の視点からみれば、それは影でも光でもないのだけど、年の離れた2人の姉妹をここからどう描いていくのか、どきどきしながら読みました。早く続きが読みたい。安永知澄さんの作品だと、これまで「あのころ、白く溶けてく」*1が一番好きだったのですが、この「赤パン先生!」は安永知澄作品の魅力を総動員したような名作になる予感がします。