いくえみ綾さんのマンガは、個人的に『潔く柔く』をはじめとする「すごく好み」な作品と「あんまりそそられない」作品の差が大きいのだけど、この『あなたのことはそれほど』はちょっと久しぶりの「すごく好み」側の作品でした。
もちろんそれがいくえみ綾さんのファンの多くに支持される傾向なのかはわからないんだけど、私の「すごく好み」ないくえみ綾作品というのは、たぶん登場人物の表裏を描いていて、複数視点の短編連作なんだと思います。
- 作者: いくえみ綾
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2012/11/08
- メディア: コミック
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それはキャラクターの描き方についても言えることで、例えば「嫌なやつだなー」と思ってる人がどこか別のところでは「いいやつ」だったりする。そういうことって現実にはたくさんあるけど、そういう余白を漫画で描くのって実は結構難しいことだと思うんですよね。
漫画での人物造形ってある程度「ヒロインの顔」「脇役の顔」「悪役の顔」「善人の顔」って決まってしまってるところがある。あまり意識はしていないかもしれないけれど、読みながら、キャラクターの容姿である程度重要人物であるかどうかを推し量ってるんだと思います。それを逆手にとった意外性を描く漫画ってのはけっこうあるけど、そうじゃなくて、ただ「どういう人かぱっと見よくわからない」顔って、実は漫画にするのは難しいんだと思います。
でもいくえみ綾さんのある種類の作品群は、かなりそこに踏み込んで描こうとしているんじゃないでしょうか。
『潔く柔く』は、この人苦手だなー、などと思いつつ、あとになって「苦手とか思って申し訳ない」とか反省しながら読むのも楽しかった。
この『あなたのことはそれほど』も、そういう読み方できたらいいな、と思いながら読みました。続きに期待しています。