ふがいない僕は空を見た

公開から随分経ってしまいましたが、評判を聞いて見に行ってきました。とてもよかった。
原作は未読なのですが、貸してもらったのでこれから読もうと思います。取り急ぎ未読の状態での感想。

複数視点で描かれる「生」と「性」をテーマにした物語。生と性というのは、性教育を命の教育、という言葉で言い表したりするような、学校の保健指導でよく使われるキーワードですが、欲求とその結果として生まれる命の狭間にある様々なままならない問題を、おもに思春期の視線を通して描くことで、そのどうしようもなさと尊さ、どちらの側にも振れずに少しだけ背中を押すような結末に導いているのがとても良いと思いました。
コスプレ主婦にナンパされて不倫関係をもつ卓巳の性欲と恋が混ざり合った真っ直ぐさ。義理の母親から、孫が生まれないことについてプレッシャーをかけつづけられる主婦あんず。「団地」に認知症の祖母と二人で暮らす、卓巳の友人福田君が母親に向けて放つ切実な声。どのキャラクターからも一定の距離をとっているかのような静かな映画なのだけど、その等しさがとても心地よかった。
永山絢斗さん演じる卓巳には助産師の母親がいるのだけど、この母親がいたからこそのキャラクターと思えるような、根の素直さがにじみでていた。そして卓巳の友人であり、同時に卓巳に対する鬱憤を持ってもいる福田君を演じた窪田正孝さんの目も、追い詰められてもなおやわらかい卓巳の表情と対照的で、素晴らしい配役だなと思いました。

原作は視点になる登場人物ごとにわかれた連作短編集とのことなのですが、映画はある程度、視点になる人物ごとに分けて描かれていながら、そのつなぎ目はとても自然で、時間を行き来しながらも、繰り返される場面の意味が変わっていくというのは人の記憶みたいで面白い。
終盤にある、福田君と卓巳が、無言のまま自転車で並走するシーンがとてもよかったです。ちょっと「キッズリターン」を思い出したりしました。
原作読むの本当に楽しみです。