プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

面白いとか好きとはまた違うんだけど、折に触れて思い出す映画というのがあって「ブルーバレンタイン」(id:ichinics:20110514:p1)はまさにそういう映画だった。まだ1回しか見てないけど、忘れっぽい自分にしてはめずらしく映画の流れをほぼ思い出せるし、ラストショットからのエンドロールに入るあの瞬間の糸が切れたような号泣とか、帰り道のエスカレーターから見た夜景とか、帰宅してすぐさま繰り返し見た予告編とか今もよく覚えている。
そんな「ブルーバレンタイン」の主演ライアン・ゴズリングデレク・シアンフランス監督が再びタッグを組むときいて楽しみにしてたのに、なかなかタイミングがあわなかった「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」やっと見に行ってきました。

冒頭、移動遊園地で全国を回っているバイク乗りのルーク(ライアン・ゴズリング)が、かつてその地域で出会った女性(エヴァ・メンデス)と再会するまでの一連のシーンで一気に物語に引き込まれる。再会した彼女には子どもがいて、それは実はルークの子だった…というところから物語が動き出すのですが、そのことを知ったルークの行動は、純粋さと身勝手さが入り交じった絶妙なバランスの上にあって、ブルーバレンタインで同じくライアン・ゴズリングが演じた彼と印象がかぶる。
単純なキャラクターではないのに、ゴズリングさんが演じると確かにこのような人物がいるような気がするし、すごく危ういんだけどすごく魅力的に見えるので、正直見ていて落ち着かなかった。なんていうか、押したらいけないボタンと一緒に部屋に閉じ込められてる気分ていうんですかね。

物語は大きく分けて3部構成のようになっていて、それぞれの部で視点になるキャラクターが異なるのだけど、ずっと中心にいるのは「ハンサム・ルーク」であり、時を経て輪が繋がるラストシーンは感慨深くもありつつ、しかし悲しくもあった。
そして輪が繋がるために必要だった第三部に登場する2人の「子ども」はどちらもその心情と身体が結びついている存在感があったと思います。特にエイヴリーの息子AJは見た目のくどい感じとかちょっと苦手だなと思いつつも、ラストの父親に向けたすがりつくような眼差しがたいへん切なくて、今後の彼に幸あれと思いました。

それから「ブルーバレンタイン」のダンスのシーンとかもそうだけど、この監督はそういうキーワードになる画を撮るのがすごくうまいなと思いました。今回もラストに出てくるあの写真で、その場のやりとりまで一気に蘇ってきてたまらなかった。
見たあとに、すごく充実した気持ちになる映画でした。よかった。