ウルフ・オブ・ウォールストリート


監督:マーティン・スコセッシ
面白かった! 約3時間という上映時間に若干ひるんでいたんですが思い切って行ってよかったです。なんといってもレオナルド・ディカプリオがノリノリで最高と最低を演じていたのが最高でした。
あまりにもノリノリなので、見ている間ずっとディカプリオによるディカプリオのための映画……という気分で、エンドロールに監督の名前がでてきてちょっと驚いたくらいです。個人的にはディカプリオ&スコセッシのコンビ作はあんまり好みじゃない作品が多いんですが、今回は全然イメージが違った。コメディタッチで、テンポもよく3時間を長く感じませんでした。

ウルフ・オブ・ウォールストリート」は、実在の株式ブローカーの回想録(『ウォール街狂乱日記 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』/asin:4152089091)をもとにした映画。
主人公が「話術」を武器にのし上がっていく過程は見てて楽しいし、楽しいけどむちゃくちゃです。あちこちネジの緩んだ車でドラッグをガソリンに、アクセル全開に突っ走っている感じ。ドラッグについては(脚色もあるとはいえ)相当無茶な使い方をしていて、もとになった人物がまだ生きてるのが不思議なくらいです。
さらにドラッグだけでなく、自分は女中毒でもあり、でもなにより金中毒だ、と冒頭で本人が語る訳ですが、「金を得る」ことはもちろん、それ以上に金を自分の意のままに動かすことの中毒なのだろうなと感じました。いろいろ最低だしディカプリオさんもインタビューで「この映画を反面教師にして欲しい」というようなことを言っていましたが、最低を楽しめるのもまた映画の醍醐味ですよね。
20代、初めて株取引の現場に出たときのわくわくした表情、会社を立ち上げたころの野心みなぎる表情、妻以外の女性に恋してしまった表情、薬物摂取のし過ぎで顔の筋肉まで緩んでいる表情、FBIすら意のままに動かすことができると思っていた傲慢な表情、色んなものを失った表情、などなどこの映画には今までディカプリオさんが演じて来たキャラクターのほとんどがいるような気がします。例えばマシンガントークの惹き付け方の上手さは、「ジャンゴ」で出演したタランティーノ作品の影響があるのかなと思ったりもしました。
特に印象に残ったのは、最初の会社を立ち上げるきっかけの部分からしても、主人公は他人をだまし続けているにもかかわらず、自分が信じた人のことは疑わないんだな、という点でした。それは主人公の唯一の美徳でもあって、
そうやって1つずつ手に入れてきたものを、彼は1つずつ失っていく。そして映画の最後に描かれる「残ったもの」を見て、この映画はとてもきれいに構成されているんだなと思いました。とても面白かった。