「娘の家出」1巻/志村貴子

放浪息子」と「青い花」というどちらも約10年続いた長編連載が相次いで完結した後の最新作。
放浪息子」と「青い花」はテーマに重なっているところがある作品なので、それからどういったことを描くのか気になっていたのですがこの「娘の家出」は確かにあの2作の延長線上にあるお話だったと思います。
それは同性愛を描いているからということだけでもなくて、人を好きになるということと、自分を他者と比較することの、間にあるすごく揺れ動きやすいものを描いているからだと思う。
思春期における自分に対する認識というのはとても揺らぎやすいもので、見るもの接するものに多大な影響を受けるけれども、だからといってそれだけで形成されるわけでもない。
放浪息子」は揺らぐ過程を描いた作品で、「青い花」は逆に揺らぐことのなかった恋を描いた作品だとも思う。
今回の「娘の家出」で描かれる複数の女の子の視点は、むしろ性的マイノリティに触れる側の視点です。ごく自然に身近にあるものとして描き(それは実際にその通りだし)、彼女たちがどのように自分の輪郭を描いていくのか、とても楽しみです。