おめでとう

朝起きて真っ先に、今日はなんていい天気なんだろうと思った。風呂に入ったり髪を乾かしたり、ばたばたと支度をしていると、妹から「今からラジオ番組に生電話で出ることになった!」と連絡がきて、あわててラジコのチャンネルを合わせて部屋の真ん中に突っ立ったまま、それを聴いた。ラジオ越しの妹の声はちょっと緊張しているみたいで、昨日の夜「どう?緊張してる?」なんてメールしたときは、ゲームやってたらこんな時間になってたよ、なんて言ってたのになーと笑う。妹がファンだというDJの人が何度も繰り返し「おめでとうございます!」と言ってくれてることに、こちらまで面映い気持ちになる。
今日は妹の結婚式だった。
メイクも髪も着付けも全部会場でやることになっていたので、スキンケアだけ念入りにしてすっぴんのまま外へでる。青い空に銀杏の黄色が映えて、きれいですねえ、なんて見たままのことを思いながら歩く。前のめりすぎて、会場には着付け予約の時間の30分も前についた。
遅れて来た母親と並んで着付けをしてもらい、ロビーに戻るとすでに父と弟たちと、新郎の家族が到着していた。あちこちに顔を向け、似てますねとか似てますかとか、お噂はかねがねとかお噂ってどんなのですかねなんて話をする。
妹とは、妹が中学にあがった頃から仲良くなって、まあほんとによく遊んでいると思う。先日、この日記を始めたころにこの日記を知っている知人は3人しかいなくて、と書いたけれど、そのうちの1人が妹だったくらい(読んでたかは知らないけど)、自分のことを何も考えることなく、話す相手でもあった。
だから新郎になった彼と付き合い始めた頃のことなんかもわりとよく覚えていて、あれこれ振り返る事も多く、だから結婚式なんて、絶対に泣く、と思っていたのだけど。
新婦の衣装(着物もドレスもあった)を着た妹はたいへんかわいく、弟と一緒に騒ぎながら写真を撮ることに夢中になったり、兄弟で写真を撮ってもらって笑ったりしているうちに、1日は終わりかけていた。
式の間中、何回も挨拶をした相手方のご家族もとてもすてきな人たちで、既に妹が家族として迎えられているのだなということを感じてしみじみする。

帰り道、母と2人で歩きながら、お互いに泣かなかったことが意外だ、という話をした。それは新郎のことを既によく知っているからかもしれないし、相手のご家族がよい人たちだからかもしれない。結婚とともに遠くへ引っ越すわけではないからかもしれないし、スピーチなどの泣かせどころは入れなかったんだろうな、というセトリだったからかもしれない。
ただ、母と別れ、今日撮った写真を一人で見返してみると、昔は笑顔がぎこちなかった弟がほんと嬉しそうに笑っていたり、ふだん仏頂面の父親もどこかうっとりした顔をしていたり、妹は相変わらずのダブルピースだったり、写っているすべての人が、いい顔をしていて、結婚式ってほんとうに、よいものだなあと改めて思った。
要するに、ただひたすらにめでたい。

何度もカメラロールを見返しながら、ふと遠くから撮った写真を拡大してみると、妹が思いっきりこっちを見ているものがいくつもあって笑う。
笑いながら、末永く、お幸せにと思った。