はじまりのうた

TLでの評判がよくて気になってみてきました。いい映画だったー!

音楽の才能にあふれたカップルが商業デビューをきっかけに上京したものの、いろいろあって恋人を失い失意のどん底にいる女性。彼女が、もう一人の主人公である「自分で作ったレコード会社を首になりそうな男」と出会い、2人でアルバムを作ることになる…という何ともドラマチックな設定ではあるのだけど、その音楽にしっかり説得力があることで、とても素晴らしい作品になっていたと思います。
とにかくキーラ・ナイトレイの繊細な歌声は意外だった。作品中ではたしかノラ・ジョーンズに例えるところがあった気がするけど、個人的にはちょっとエイミー・マンを思い起こしたりした。柔らかいんだけど奥行きのある声で、とても魅力的でした。
それから、NYの街で録音するという「アルバム」制作の様子もすてきだった。こんな風に、NYの昼も夜も夕方もたっぷり見れる映画って実はあんまりないんじゃないかなと思う。ここ1年くらいずっとNYに行ってみたいな〜と思っていたところでもあったので(CIPHER再読きっかけだけど)、すごく熱心に風景をみてしまいました。
主人公はミュージシャンとして成功し変わっていく元恋人(髭)のことをどこかあきれたように見ている。いろいろどうかと思う変貌はあるものの、「私たちが好きだった、作りたかった音楽はこんなのじゃないでしょ」という態度に、少し居心地の悪さも感じていた。
でも、映画のラスト、主人公が元彼のライブを見に行くシーンで彼女が感じたのはきっと、どんな形であれ音楽が人に愛されるということに、作者の思いはあまり関係ない、ということなんじゃないかと思う。音楽は聴く人のものでもある。そのことをこの映画は肯定して終わったような気がするのがとても嬉しかった。