フォックスキャッチャー

監督:ベネット・ミラー
見終わってからかなり経ってしまったけど折に触れて思い出す映画。

兄弟でオリンピックで金メダルを獲得したものの、その栄光を集めるのは社交的で人格者の兄デイヴである、ということに、兄を慕いつつも鬱屈とした気持を抱えている弟マークが、ある大金持ち(デュポン)と出会い、その大金持ち率いるレスリングチームに参加することになる…という実話をベースにしたお話。
マークにとって安心/信頼出来る相手はデイヴだけなんだろうなと思うんだけど、自分と違って「幸せ」を体現しているデイヴに頼りたくない気持もわかるし、とはいえデュポン氏は不穏すぎる。そっちに行ってはダメだと思うのにとめられない歯がゆさと、デュポン氏の抱える底抜けの寂しさのようなものに惹かれる気持ちの両方があって、見ている間中ずっと歯を食いしばっていた気がする。
とても正しく、でも周囲の人に劣等感を与えてしまっていることには気づいていないデイヴ。承認欲求に内側から食殺されていくデュポン氏。そして自身も金メダリストだというのに、控えめで不器用で、常に寄る辺ない表情を浮かべているマーク。3人ともこれ以上ないというくらいのキャスティングだったと思う。緊張した三角関係は息苦しく、ぎりぎりまで張りつめたそれがはじける瞬間が切なかった。