今の仕事をしていない自分のことを考える。
よく思い浮かべるのは、薄いグレーの制服を着て、非常階段で休憩しているとか、晴れの日は屋上で弁当を食べるとか、椅子がギイギイ音がすることが悩みだとか、そんな仕事内容とは関係のないこと。でも体育の授業で着替えるのも嫌いだった自分には、毎朝「職場で着替える」というのは少し億劫にも思える。
昔、友人が「毎朝通勤電車に乗る仕事が辛い」と言っていたことを思い出す。モノになったような気持ちがすることに耐えられない、と彼は言っていた。その言葉が切実なものだということは私にも伝わったし、それからしばらくして会社をやめ、フリーの仕事で順調に活躍しているようなので、彼にとってそれはとても大切なことだったのだろう、と思う。
私自身はモノとして運ばれるのは割と心地が良いし、誰も他人のことを見ていないから都会の電車は好きだなと思う。けど、それはまあ、仕事場なりどこかへ行くことで、自分に解凍されるという保障つきの心地よさなのかもしれない。
でもそんなふうに、仕事を選ぶ上では自分の心地よさとの折り合いをつけることが、大事なんだなと思っている。
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津村さんの新刊は、津村さんの小説が好きというのももちろんあるけど、それだけでなくタイトルに惹かれて買った。
自分と年の近い主人公が、さまざまな仕事を転々とするお話で、そのいくつかはすこし不思議で、でもどこかにこんな仕事があるのかもしれない、と思えるような本だった。個人的にやりたいのはおせんべいの袋裏を考える仕事で、絶対やりたくないのはポスターの仕事。ただどれもその場なりの楽しさや難しさがあって、
やはり、この世にたやすい仕事はないのだなと思う。でも仕事は生活の一部であり、自分に適した仕事はきっとある。
- 作者: 津村記久子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2015/10/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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