World Baseball Classic

スポーツ観戦には縁のない人生だった。
子ども時代から運動が苦手なので(逆上がりはできたことがない)、スポーツ自体に対する苦手意識もあると思う。特に野球は、長らく「好きな番組が遅延する原因になるもの」*1というイメージだった。
一方で、漠然と、贔屓のチームの勝敗に一喜一憂するような日常を送ることへの憧れもあった。これは主に村上春樹の影響だと思う。ビールが好きなので、野球場といえばビールがつきものというイメージも憧れに拍車をかけた。


昨年の3月に『嫌われた監督』を読んで野球に興味を持った私は、これは贔屓のチームを持つチャンスかもしれない、と思った。
しかし『嫌われた監督』は落合博満監督時代の2004年~2011年の話であり、そこに登場した選手たちはほぼ引退してしまっていた。メインに取り上げられた選手で昨年現役だったのは福留さんだけだった(引退試合を配信で見ることができたのは嬉しかったです)。
引退した選手の多くはコーチもしくは野球解説者をやっていて、なので本に登場する選手が解説をすることが多い中日戦を中心に見始めたものの、何しろスポーツ観戦の体験自体がほぼ0なので今ひとつとっかかりがわからない。
好きな選手ができるのが先なのか、好きなチームができるのが先なのか。
なんてぐずぐず考えていた頃、私に『嫌われた監督』を勧めてくれた先人に「侍JAPANから見ればいいんですよ」と言われたことがあった。

正直、その時はピンとこなかったというか「臨時のチーム」を見て思い入れたとしても1回限りでしょ、と思っていた。「侍」というワードにも抵抗があった(正直これは今もある)。

しかし今回のWBCで選ばれた「侍JAPAN」を見ると、一応昨年1年間なんとなくでも野球を見てきたおかげで知っている選手が大半になっていた。WBCが何の略かを今年知ったくらいの知識でだ。
例えば、昨年初めて野球場で生で見た試合でホームランを打った牧選手。前の席の人がMAKIと書いてあるユニフォームを着てたのも印象に残っていて、私にとってホームランの象徴は牧選手になっている。
そのほかにも、落合さんと対談していた選手とか、Twitterのあの人が推してる選手だとか、youtubeチャンネルで人柄を知って好感を持っていた選手とか、事前の特番を見て気になってしまった選手とか、昨年の日本シリーズでいきなり大活躍してこれは……となった選手とか。

そんなわけで、国内での強化試合の段階から配信で見ていたのだけど、気になってる選手が活躍すれば嬉しいし、Twitterで「うちの◯◯が」と言っている人がいれば、この人の応援しているチームはあそこなんだなということがわかったりするので面白い。おそらく以前からそういう話を目にはしていたはずなのに、興味を持つことでいきなり目に飛び込んでくるようになる。また、若手選手の起用法から、監督の想いを想像できたりするのも、今回の代表チームの醍醐味であった気がする。

ちょうど仕事で色々トラブルが重なっていた時期だったのもあり、野球を見るのがかなりいい気分転換にもなって、シーズン中、配信に映る平日の観客席にいる胸ポケットに社員証を突っ込んで観戦してるおじさんの気持ちってこんな感じなのかなと思ったりもした。

運動が苦手なオタクとして思春期を過ごしたので、スポーツ選手は異星人のようだなと感じることも多い。
それでも、なかなか打てない選手が打てると嬉しいし、厳しい場面でマウンドに立つ選手がいるとその精神力に憧れてしまう。

特にWBC準決勝→決勝の流れは各所で漫画のようなと表現されるような展開であった一方、選手に「これは最終回ではない」というような勢いがあることも印象に残った。やっと打てたホームランの次の試合でピンチを救うホームランを打ってしまったりするように。
そして、この「文脈」は選手の現役時代を通して続いてくし、どのチームを好きになるかというのはきっと、様々な文脈をどこの視点から語るかということなんだろう(少なくとも自分の場合はそうなりそう)。

決勝後、選手のインスタを見れば、別れを惜しみつつ「明日からはライバル」なんてことを投稿したりもしている。そんな様子にグッときて、いよいよ開幕が楽しみになっている。
去年は入院もあって球場には一度しか行けなかったんですが、
今年こそは球場にもたくさん行きたいし、ここを応援する!というチームもしくは選手を見つけたいなと思っています。



WBCのレポートはこの今永選手の文章がとても良かった。
hochi.news


*1:子ども時代は配信ではなかったので