今年読んだ本の中で特に好きだった10作品を紹介したいと思います。
書籍は友人のおすすめで読むことが多いのだけど、今年は特に、そのおすすめが自分の好みにはまることがとても多く、ありがたい1年でした。
自分は主に電車移動中に読書をするため、スマホで電子書籍を読むことが多いのだけど、今年はSNSを見る時間がだいぶ減ったので、その分本を読めたような気がする。あくまでも自分比でですが。
以下、読んだ順番に感想をメモしていきます!
「あらゆることは今起こる」/柴崎友香
今年最初に読んだ本。
医学書院の「ケアをひらく」シリーズの中の1冊で、小説家の柴崎友香さんがADHDと診断されてからの、自分との付き合い方を観察した報告書のような構成になっている。
日記にも何度か書いたかもしれないけれど、私もホルモン系の治療をはじめたばかりの頃、自分の精神の手綱を握るのにかなり苦労した(現在はだいぶ落ち着いた)。
たとえば、この本の中にでてくる「マルチタスクが得意ではなく常にマルチタスク状態になってしまう」という状態などはまさにその、自分の精神と格闘している時の自分と似ていて、こういうの、自分だけじゃないんだなととても心強く読んだ。
それと同時に、この感覚は全然わからないなと感じるところもあり、自分の精神との折り合いの付け方というのは人それぞれに状態は異なるものなんだなと思った(体調だってそうだからそりゃそうなんですよね)。だからこそ、もちろん治療などで道筋をつけることが役立つ場合もあるにせよ、こうした観察と試行錯誤が役立つ分野なのかもしれないなということを考えたりした読書だった。
「おもろい以外いらんねん」「ピン芸人、高崎犬彦」/大前粟生
読書会でおすすめしてもらって読んだ本。大前粟生さんの小説で、この2冊はどちらも芸人を題材にしている。
いわゆる「お笑い」について、以前は話題になる賞レースを見るくらいしかしていなかった。けれど、コロナ禍によくラジオを聞くようになったのをきっかけに、だんだんと距離が縮まり、人となりや人間関係が見えて来るとより面白い、と思うようになって今に至っている。
そして、特にコロナ禍以降の「お笑い」界の雰囲気みたいなものを青春小説として描いているこの2冊は(私にはこのモデルに誰がいるのか/いないのかはわからないけれど)自分がお笑いを見始めた頃の雰囲気と重なる部分もあったりして、とても楽しく読んだので印象に残っています。
「いまだ成らず」/鈴木忠平
私が野球にはまった理由こと「嫌われた監督」の著者、鈴木忠平さんのドキュメンタリー本。
現代と過去を行き来しながら、羽生善治さんと対戦した人を描きながら時代を描く……という構成になっている。
かつて電王戦をきっかけに将棋に興味をもったものの、どこに手をかければよいのかわからずはまりきれなかったことがあるのだけど、この本を読んで、将棋もまた、大河ドラマとして見ることができるジャンルなのだなと感じた。野球にはまったのも結局はそこなので(それが全てではないにせよ)、これを先に読んでたら今頃将棋をおいかけていたかもな、と思ったりした。特に佐藤康光さんの章がよかったな。
「ずうのめ人形」ほか、比嘉姉妹シリーズ/澤村伊智
友達におすすめされて読みはじめたのですが本当に面白い。もったいないので立て続けに読まないようにしていて今シリーズ4冊目まで読んだところ。
ホラー小説はそれほど読んだことがないので(小野不由美くらいかな?)おすすめしてもらわなかったら手をつけないジャンルだったと思うんだけど、本当に面白くてすごい。
1作目を映画化した「来る」は見たことがあったけど、小説とまた雰囲気は全然違います。
そんなシリーズの中で、今のところ一番好きな1冊を選ぶとしたら「ずうのめ人形」かなと思う。呪いの原稿をきっかけに「人形」が近づいてくる、というお話。どうなるのか続きが気になって一気に読んでしまいました。まだ読んでいないシリーズ作品のが複数冊あるのが嬉しいです。
「庭の話」/宇野常寛
友人の感想を読んで気になって読んだ本。
現代のインターネット、SNSユーザーへのパンチラインが連続する序盤はもちろん面白いけど、新たな場のたとえとして「庭」を出してくるところが面白かった。「世界が自分と無関係に変化すること」の魅力についての話が面白く、印象に残る。先日、作中にでてくる「小網代の森」にも行ってみた。
「バベル オックスフォード翻訳家革命秘史」/R・F・クァン
こちらも友人のおすすめで読んだ本。
「ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる魔法」を研究する翻訳研究所「バベル」にスカウトされる中国人の少年の物語。
著者は中国に生まれ、アメリカで育ち、イギリスで学んだ経歴を持つ人で、だからこそ描けるのであろう「言語」の面白さが第一印象。そして、読み進めていくうちに、希少な言語を利用して生み出される力は、富める者のために使われている、というところから、言語の搾取の歴史へとつながっていく展開がすごい。
ファンタジーとしてもアイデンティティの話としても、冒険譚としても読み応えがあった。
惜しいのが私が日本語以外にもっと得意な言語があれば、あれとあれで生み出せる魔法があるなとか、色々想像できて楽しかったのかなということ。
ともかくこの作者が次にどんな話を書くのか、楽しみです。
「11/22/63」/スティーブン・キング
ずっと前に文庫本で買ってずっと積んでいたものを電子で買い直してついに読みました。読んでよかった。めちゃくちゃ贅沢な読書体験だったな。
ケネディ暗殺を防ぐためにタイムスリップをすることになる、という物語なんだけど、タイムスリップできるポイントが1点しかなく、そのためタイムスリップ先での目的を果たすためには一定期間を過ごさなくてはならない、という設定なんですよね。そこから生まれる、いつか失われる、でも現実と同じだけの質量がある時間の描き方が素晴らしい。
長い物語だけど、長いからこそ、自分の体験として残る小説ってあると思うし、この本はまさにそういう物語だった。
「ブレイクショットの軌跡」/逢坂冬馬
「同志少女よ、敵を撃て」の作者、逢坂冬馬さんの新作で、「ブレイクショット」という名前の車がたどる運命とともに、複数の主人公の物語を描いている。
Xをあまり見なくなったせいで新刊情報に疎くなっていたのですが、これも友人に教えてもらって手に取りました。
同志少女の時に、この作者さんはセクシュアリティをテーマにした物語を描きそうな感じだけど、描くとしたらどんな感じなのかな…ということをうっすら考えていて、この本はそれがテーマというわけではないのだけど、個人的にその部分もとてもよかった。
先日書いた今年の映画まとめを書いていても感じたけど、世界の速度と個人の人生の速度の噛み合わなさ、そのギャップが近年はテーマになっている作品が多く、それに自分も惹かれているという感覚があります。
「ダンシングガールズ」/マーガレット・アトウッド
アトウッド作品は『侍女の物語』しか読んだことがなかったのだけど、目に映る現実の背景には、そこに生きる人の内部にある広大ななにかがあって、それはときにグロテスクだったりする…という視点の雰囲気はしっかり繋がっているんだなと思った。
特に「旅行記者」や「訓練」は、SNSで表層を見せ続ける生活に多くの人が慣れてるいまだからこそ読み応えがある。
「大都会の愛し方」/パク・サンヨン
今年の映画ベスト発表会をしたときに、友人がこの作品を映画化した「ラブ・イン・ザ・ビッグシティ」を挙げていて、原作もよかったと聞いてひとまず原作から読んでみたのだけど、読み始めた途端に引き込まれてあっという間に読み終えてしまった。いい時間だった。
冒頭の作品は、ゲイの主人公とその親友の女性が同居しているんだけど、ある日その親友が結婚することになって…、という話。独白調の文体も気持ちよく、すごく親密な話を聞いているみたいだった。
そしてなんというか全体的に「恋」を思い出すような1冊だった。特に最後の作品の最後の3行、たまらないですよね。私はああいうのがとても好きです。
以上です。
今年はだいたい43冊くらい読みました。
来年は、年50冊くらい読めたらいいな。目標の類も改めて考えたい。










