遠い夜空の向こうまで

朝、つり革につかまったまま、目の前の席に座っている女の子の寝顔をなんとなく見ていた。見かけない制服なので、もしかして寝過ごしているんじゃないのかな、なんて考えながら、そのあまりにも無防備な寝顔に、眠っている人はみんな好きだな、なんてことを思う。

たぶん、人の顔を好きなだけじっと見ることができるのなんて、相手が眠っているときくらいだ。閉じたまぶたの奥はいまここを見ていないから安心だし、それはつまり眠っている人と、起きている私の過ごす時間はまったく別の線上にあるということだ。
眠っている人を見ていると、起きている自分がいないような気分になる。それは心細いようで、でもなんとなく気持ちよくて、
だから眠っている人を見ているのが好きだなと思った。

季節の変わり目は眠いですよね。