報告したい

もう11月も後半なのですが、下書きに入れたまま更新し忘れていた日記があったので10月の日記です。

10月11日

岩瀬仁紀さんの講演会に行った日。

何度かここにも書いた話ではありますが、昨年の春、私は「嫌われた監督」を読み、岩瀬さんについて書かれている章(第5章)で「クローザー」というポジションがあることを知り、かっこいいなと思い、実際に野球をみてみたいと思うようになったわけです。
つまり私の野球の原点は落合博満さんと岩瀬仁紀さんなんですよね…。
というわけで、昨年9月にも落合博満講演会に岩瀬さんがゲスト出演するというので名古屋に行ったりしました。

引退後の岩瀬さんは解説のお仕事もたくさんされているのですが、9割方(以上かも)愛知ローカルの媒体なので、あまり関東でその活動を見ることはできませんでした。
しかし! 今回はなんと関東でのイベント開催。友人に教えてもらい即申し込んだのですが、サイン本がついてくる上に写真撮影もできるとかで心の準備が大変でした。

詳しくは備忘録を書いたので折に触れて読み返したいなと思います。記録大事。

fusetter.com


10月13日

私が野球にはまっていったさまを知っている友人に、今年のまとめを聞いてもらった日。

話をしていると、ある程度自分の考えも整理されていくようで楽しい。
自分は選手たちの関係性を見ているのが好きだけれど、それはいわゆる(オタクの文脈としてよく言われる)「壁になりたい」ということではなくて、無になりたいというよりは見ることで浮かび上がる自分の反応を観察しているような気がする。
もちろんファンが見れる範囲には限りがあるのだけれど、少なくとも試合という盤上に置かれるものはできる限り見た上で、自分が何を思ったのかを記録していきたいと思っている。

そんなことを話しているうちに、ふと思い出したのが、ずっと前からはてなのプロフィールページにおいているこの言葉だった。

歴史が私にどんな関係があろう。私の世界こそが、最初にして唯一の世界なのだ。私は、私が世界をどのように見たか、を報告したい。ヴィトゲンシュタイン『草稿一九一四 - 一九一六』より

結局自分にとって大事なのはこれなんだなと思った。この日記もそう。

あと、この日は以前から気になっていたお店にようやく行けた日だったのだけど、秋刀魚と鹿肉と柿と日本酒、といった秋らしいテーブルで大満足だった、とか書いてあって、今日読み返してみて羨ましくなった。
もう冬なので、また行きたいな。

日本シリーズのあった1週間(後編)

関東に住んでいると、あまり阪神タイガースのニュースが流れない。
素晴らしい試合の翌朝も街はしんとしていて、ただコンビニのスポーツ新聞棚だけが光り輝いている。

シーズン中はずっとそのことが物足りなかったのだけど、さすがに日本シリーズは違った。
1週間、毎日面白い試合が繰り広げられ、翌朝も昨日の試合の話題に溢れていたのが嬉しかった。


写真は7月の甲子園

そんな1週間の日記と試合展開メモ続きです。
前編はこちら
日本シリーズのあった1週間(前編) - イチニクス遊覧日記


11月2日/5試合目

甲子園/先発:大竹耕太郎(阪神)vs田嶋大樹(オリックス

朝から、明日(休日)の午前中に打ち合わせの打診が入り、普段ならへこむところだったけど、昨夜の快勝の余韻で元気だった。好きなチームの勝敗が翌日の機嫌を左右するなんてことが我が身に起こるとは思ってもみなかった。
例によって定時で退社。ラジオを聴きながら家路を急ぐ。
11月の夕暮れにこうして中継を聴きながら早足で歩いたことを、きっといつか思い出すのだろう。
帰宅して、8時頃までは文鳥の放鳥をし、それ以降は夕食を食べたり、弁当の用意をしたり、隙あらば風呂に入ったりしながら観戦をするのは「生活」だ。

この日の試合は、昨日に引き続き”流れ”を引き寄せる力を感じる試合だった。
テレビの前で見てるだけなんだけど、なかなか点が取れないとしんどいし、球数重ねて丁寧に抑えようとしたところにエラー出たりすると悔しいし、援護したいのに1点がはるか遠くに感じられて、
でも点が入るとそんなの全部忘れて一気に全て報われたような気持ちになる。好きなチームの試合を見るって、そういうことなんだと思った試合。

  • 試合展開メモ

1回裏、今日も近本選手のヒットで幕開け。本日も絶好調で頼もしい限りだ。4番、大山選手の打席で森下選手が盗塁を試み、このシリーズ初のリクエスト判定となった。結果は失敗。だけど勢いのある滑り出し。

ラジオ実況はこの日の先発である大竹投手を「ハイテンポ投法」と評していた。現役ドラフトでホークスから移籍してきた今年、大竹投手はローテの一角を担い2桁勝利をあげている。ホークス時代は球速がないことを自身の弱点と捉えていたが、移籍後は制球力を長所と捉えられるようになった、ということをインタビューで話していた*1。コントロールもさることながら、緩急を使い分けた多彩なボールで打者を翻弄するのが大竹投手の魅力だ。
今日も好調な様子が音声でも伝わってくる。早く帰って画面でみたいなと思いながら家路を急ぎ、3回裏あたりで帰宅した。

4回表、ゴンザレス選手のソロホームランでオリックスが先制。でも動じない。この1年で「ソロは仕方ない」と思うようになった。そこからの展開がどうなるかだ。
4回の裏、先制を受けてかオリックス田嶋投手の投球が変わった。解説が「ギアチェンジ」と話していたが、アクセルを踏み込むかのような、投球のモードの変化が素人目にも感じられた気がした。

しかし大竹投手も譲らず、5回表までを投げ切り、6回表で西純矢投手へ交代。

西純矢投手は、今年5月24日、リリーフとして登板したスワローズ戦で、思うような投球ができなかったのかベンチで涙を浮かべていた様子が印象的だった。結局その試合は勝利し最後はちゃんと笑顔になっていたのだけど、野球選手ってこんなに感情をあらわにするものなんだ(みんながそうなわけではないですが)、と自分の中で野球選手のイメージが変わった瞬間でもあった。
監督に「問題児」と称されていたのは、激励だと思うのだけど*2、リーグ優勝時のビールかけでは「今年は(自分は)全然だめでした」と発言したりしていたから、納得のいくシーズンではなかったのかもしれない、と想像する。
でもだからこそ、このような場面で出番がくること、きっとめちゃくちゃ気合が入っているだろうなとわくわくした。1年間見たことで、そんなふうに、一人ひとりの選手の物語が少しずつ見えてくる。

6回表は0に抑える。7回表、相手ピッチャーに四球を出す場面もあったが1アウトをとったところで島本投手に交代。
するとオリックス森選手の打席で、中野選手の捕球ミス(とても珍しい)に続いて、森下選手のファンブルによって1点を追加されてしまった。再びピッチャー交代、この回最後の打者は石井投手が抑える。

0-2のまま流れが傾きかけた8回表、登場したのは昨夜の1球の余韻も鮮やかな湯浅投手だった。今度は1イニングを3者で抑える圧巻のピッチングで完全復活をアピールし、再び流れを変える。

8回裏、先頭、木浪選手のヒットにオリックス側の悪送球も絡み一気に2塁へ。代打の糸原選手も出塁。そして今シーズン「得点圏の鬼」と呼ばれた得点圏打率1位の近本選手がタイムリーヒットで1-2とした。
得点圏打率という指標があること、それこそが野球に「流れ」があることの証のように思う。
さらに中野選手の送りバント、そして先ほど自身のファンブルでの失点を挽回するかのような、森下選手のタイムリスリーベースで3-2の逆転! さらに4番の大山選手のタイムリーで4-2、坂本選手のタイムリーで6-2、打順が1周して、なんとこの回、6点を追加した。

9回表は岩崎選手が3者で抑えて勝利。38年ぶりの日本シリーズ優勝へ王手をかける試合となった。
継投は大竹、西純、島本、石井、湯浅、岩崎。ヒーローインタビューは湯浅&森下。2人とも嬉しそうで見ているこちらも嬉しい。
結果:阪神6-2オリックス


11月3日/移動日という名の休養日。

この日は中日ファンの友人と、最近Bリーグにはまっているという友人と3人で飲んだ。
ずっと前からちょくちょく集まるメンバーなのだけど、こんなふうにスポーツの話ばかりしているのはかつてないことで新鮮だった。競技は違っても「スポーツ」を好きになることで「わかる!」が増えるのも面白い。

中日ファンの友人には、昨年、私が初めて選手名鑑を買ったばかりの頃にも話を聞いてもらった。その時は名鑑を見ながら、私はクローザーがかっこいいと思うので現役のクローザーを応援したい、というような話をした覚えがある。岩崎優選手のでる試合を見てみよう、と思ったのもたしかその日だった。
ご飯の後、お茶をしながらあれこれ話をして解散。

お土産に阪神のリーグ優勝記念のお菓子をもらった。
知ってたけど、ほんとに優勝したんだなあ、って実感できてとても嬉しかった。


11月4日/6試合目

京セラドーム/先発:山本由伸(オリックス)vs村上頌樹(阪神

掃除と洗濯をすませてから妹の家へ。
先月生まれたばかりの妹の子は、まだ生まれてひと月も経っていないのにもう赤ちゃんから「子ども」へと変化しているような気がした。たくさん抱っこさせてもらったけど、明らかに前回より重くなっていて頼もしい。
母もやってきて入れ替わり立ち替わりで抱っこしつつ、あれこれと話をする。日本シリーズを楽しんでいるらしい母は普段は日ハムを応援しているのだけど、阪神なら中野選手が好きとのこと。
母が帰ったあとも、なんだかんだ夕方までたっぷり喋って帰宅。

この日は友人の助言に従って妹の好物を差し入れたのだけど、もう袋を見た瞬間に「食べたかった!」と喜んでくれて嬉しかった。買い物などにでれるようになるにもまだしばらくかかるだろうから、ちょくちょく差し入れに行きたいと思う。
電車を乗り継いで帰宅。夕食を作っているうちに今日の試合がはじまった。

  • 試合展開メモ

中6日で再びのマッチアップとなった本日の先発。
相手は今年3年連続3度目の沢村賞を受賞している山本投手であり、なおかつこの日本シリーズが終わればメジャーリーグへ挑戦するとも噂されている。そんな選手から2試合連続で勝ちを奪うことはできるのだろうか?
阪神は第2、3戦で先発した西勇輝投手、伊藤将司投手もベンチ入りしている。

1回裏、1アウト1、2塁にランナーを背負ったピンチでオリックス5番、頓宮選手の打球を木浪選手が横飛びで捕球するファインプレー。

2回表には背番号7番ノイジー選手が先制ホームラン! 阪神側にはこれがこの日本シリーズ初のホームランとなった。そこからこの回3つのヒットがでたものの、得点は1に止まった。

2回裏、オリックス若槻選手のタイムリーで同点、続く中川選手の犠牲フライで2-1の勝ち越しとなり、さらに5回裏で2点を追加され4-1。

6回の裏で投手は2試合目先発を務めた西(勇)投手に交代。失点は8回のソロ被弾にによる1におさえたものの打線の援護は出ず、5-1で試合終了となった。

完投勝利した山本由伸投手は、さすが昨年日本一となったチームのエースという圧巻のピッチングだった。
村上選手の悔しそうな顔が印象に残る。しかし日本シリーズで2回先発を任されたのは自分だけだということとはきっと大きな自信になるのだろう。
そして両チームここまでの得点は23対23、まさに五分五分の戦いだ。

結果:オリックス5-1阪神


11月5日/7試合目

京セラドーム/先発:宮城大弥(オリックス)vs青柳晃洋(阪神

家事を片付けてから映画館へ。「ゴジラ-1.0」を見て(ゴジラのテーマが流れて満足)、今週分の作り置き食材を購入して帰宅。
この日は前日まで地上波での放送予定がなかったため、昨晩LINEで母にTVerの使い方を説明していたのだけれど、さすがに最終戦を放送しないわけにはいかないということか、急遽地上波放送が組まれていた。

料理と風呂を済ませ、万全の体制で試合開始時間を迎える。3勝と3勝同士の、日本一をかけた最終決戦だ。

  • 試合展開メモ

今日の先発は、CS・日本シリーズ通して初登板となる青柳選手。
昨年は最多勝最優秀防御率、最高勝率の3タイトルを獲得し、今年の開幕投手にも選ばれたエースだが、今年序盤は調子が上がらず、5月から調整の日々が続いていた。
復活は2か月後の夏で、私が初めて球場で見た阪神の勝利試合も青柳選手の先発試合だった。
ブルペンには第3、4戦に先発した伊藤投手、才木投手もいる。そしてDHにはついに今シーズン、ずっと試合前の円陣で皆を鼓舞し続けてきた原口文仁選手が登場。
最終決戦といった趣の布陣に気持ちも高まる。

1回表、近本選手の出塁から中野選手の送りバントが成功という「調子の良い時」の流れで幕開け。
応援席からはすでにチャンテが流れている*3。基準はわからないのだけどシーズン中は、チャンスでも試合前半にはあまりかからない気がするので、1回でもうチャンテという応援団の出し惜しみのなさも日本シリーズ! っていう高揚感がある。
この回、得点はなかったものの、なんとなく押せている雰囲気のまま1回の裏、このシリーズ初の「下手投げ気味のサイドスロー」で投げる青柳選手のフォームが鮮やかだ。

試合が動いたのは4回表。森下選手のヒットに続いて、打席に入った大山選手がデッドボールを受け1、2塁。腕か背中のようなところに当たって心配していたところに、続いて打席に立ったシェルドン・ノイジー選手が昨日に続いてのホームランを繰り出し一挙3得点を先制した。
会場はもちろん、野球のTLも大歓声に包まれていた。今シーズンはなかなか打率が上がらず、きっと苦しんだ時期もあったと思う。けれどまさか日本シリーズでの2日連続ホームランだなんて! 普段物静かなノイジー選手が満面の笑みを浮かべているのをみてぐっときた。

そして5回表、坂本選手、近本選手とヒットが続き、中野選手の1塁アウト判定がリクエストで覆ったところにオリックス宮城投手から比嘉投手に交代。直後、森下選手のタイムリーで1点、大山選手の内野安打で1点、さらにノイジー選手のヒットでこの回3点を加えて0-6に。

5回裏、2アウト1、2塁となったところで島本投手に交代。今年、岡田監督に「ランナーおったら島本よ」*4と評された火消し役が今夜もこの回最後のアウトをもぎ取って0に抑えた。

6回裏から投手は伊藤将司投手へ。今年、2年ぶりの2桁勝利をあげた伊藤投手は、いつも通りたんたんと(私の主観ですが)、0を積み重ねていき8回裏までを投げ切った。

9回表、またしても近本選手が出塁。そして3番森下選手も負けじとタイムリーを打ち、0-7とした。

そして9回裏。登場するのは、今年守護神を務めた岩崎投手だろう……と多くの人が思っていたところに、呼ばれたのはなんと桐敷投手! 第4戦の勝利確定後には涙も見せていたけれど、この日も「スペードのエース」らしいピッチングで2アウトをとった。
そして3人目のバッターを迎えるタイミングで岩崎投手が登場。
オリックス頓宮選手に出会い頭のソロホームランを浴びるも、最後はレフト方向に飛んだ打球をノイジー選手がキャッチして試合終了。
阪神タイガースが38年ぶりの日本一のチームとなった。

結果:オリックス1-7阪神


***


試合が終わったのは日曜の夜だった。

日本一が決まった瞬間、そんなにたくさんの人に野球の話をしているわけではないのに、いろんな人から連絡をもらって、好きなチームのことで自分を思い出してもらえるなんて素直に嬉しいことだなと思った。

明日は月曜だけど、我慢しきれずビールをあけ、日が変わる時間まで選手たちのビールかけをみた。
ビールかけの挨拶で監督は日本シリーズの結果について「3月31日にスタートしてこんな日が来るとは思ってなかった。ほんとは9月14日(リーグ優勝)のためにやってたんだけどね、それのご褒美がきたんでね」と言っていた*5

ファンとして見ていても、リーグ優勝があくまでも「本番」であって、日本シリーズはボーナスステージのような感じなのかなと、最初は思っていた。連日面白い試合で、確かにご褒美のような、カーテンコールのような、お祭りみたいな1週間だったけど、
でもやっぱり勝って、こうして喜んでいるところを見たかったのだと思う。

本当に、2023年の阪神タイガースを追いかけられてよかったです。
ありがとう阪神タイガース

(そしてはじめてのオフシーズンがスタートしました)

*1:月刊タイガース2023.11月号

*2:https://www.nikkansports.com/baseball/news/202305200000406.html

*3:「チャンス襲来」という阪神では一番人気がある(たぶん)チャンステーマ

*4:https://www.nikkansports.com/baseball/news/202308040001589.html

*5:https://youtu.be/dYwOzM039VE?si=567e8bpW3wUnI-_W

日本シリーズのあった1週間(前編)

昨年春、ドキュメンタリー本をきっかけに野球に興味を持って*1、選手名鑑を買ってDAZNに入り、手探りで野球を見始めた自分が、まさかその翌年に好きなチームのリーグ優勝どころか、CS、そして日本シリーズまで追いかけることができたなんて、あまりにも恵まれすぎていると思う。
自分は「38年ぶり」の重みを知らない。
それでもこの得難い、特別な1年を思い切り堪能できたことが素直に嬉しい。

これが、38年後も語り継がれる1週間になるように。
そんな気持ちで過ごした日本シリーズの1週間の日記と試合展開をメモしておきたいと思います。


写真は2023年8月22日の京セラドーム


10月28日/1試合目

京セラドーム/先発:山本由伸(オリックス)vs村上頌樹(阪神))

初戦は友人と吉祥寺のスポーツバーで試合をみた。
お店にいたお客さんは、おそらくはほとんどがオリックスでも阪神でもないチームを応援している野球ファン、という雰囲気で、盛り上がりも程よい感じ。ビールもおいしかったし、チャンスがあったらまた行こうと思う。
 写真は試合開始前、始まる頃には満員だった
先発は今年初めて1軍ローテ入りし二桁勝利をあげ、日本シリーズの初戦先発にまで上り詰めた3年目の村上頌樹投手。
この記事のセリフが村上投手のマインドをよく表していて好きです。

135日前。7回パーフェクト投球の1日から変わらないことがある。
「ちゃんと抑えてヒーローになるか、バリバリ打たれて炎上して2軍調整するか。今日は俺どっちや! って思ってます」
https://www.nikkansports.com/baseball/news/202308250001613.html

昨年の日本シリーズはテレビで見ていて、とにかくオリックスは強い、というイメージがあったのでかなり緊張していたのだけれど、結果的にはシーズン中の調子の良い時を思わせるような、打線のつながり方にわくわくする試合だった。

  • 試合展開メモ

1回表に中野選手のヒットがあったものの、そこからは阪神オリックスともに0を重ねていく展開。

動きがあったのは5回表。佐藤輝明選手が出塁、続くノイジー選手の打席で初球から走り盗塁成功、続くDH渡邉諒選手のタイムリーで1点を先制。そこからも木浪、近本、中野とヒットが続いて一気に4得点。

さらに6回表、2023年のシーズンではリーグ最多、99の四球を選んだ大山選手が今回の日本シリーズ初となる四球を選んで出塁。ノイジー選手のヒットで1アウト1、3塁となったところで、今年「恐怖の8番」という異名が定着した木浪選手、続く坂本選手の連続タイムリーで1点ずつを重ねる。1番近本選手に打順がかえったところでオリックス側のピッチャー交代。近本選手は四球を選んで満塁。さらに中野選手のタイムリーでこの回なんと3点を重ねて0-7。

さらにさらにの9回表。近本選手が本日3本目のヒットで一気に2塁へ。3番森下選手もまけじとヒットで1、3塁。大山選手再びの四球を選び満塁、佐藤輝明選手のサードゴロで1点追加の0-8。

投手は、村上選手、加治屋選手と繋ぎ、9回は岩貞選手が3者3振で締め括り大事な初戦を勝ち取った。

結果:オリックス0-8阪神


10月29日/2試合目

京セラドーム/先発:宮城大弥(オリックス)vs西勇輝阪神

起きて掃除をして洗濯機をかけている間に近所のモーニングへ。
本を読むつもりだったのだけど、近くに座っていた二人連れのおじいさんが日本シリーズの話をしているのが嬉しくて頭がそちらに引っ張られてしまった。

普段、球場以外で「この人野球ファンだな」って人を見かけることは少ない。
でも通勤電車で中継を見ている人を見かけたり、球場帰りには同じ最寄り駅で降りるユニ着用のファンがいたりもするので、ただ気づかないだけなんだろう。
平日に備えたおかずの作り置きと風呂を済ませ、準備万端で試合開始を待つ。

この日は結果的に、昨晩とぴったりスコアも真逆な試合展開となった。
しかしあまり不安には思わなかった。
なんというか「リーグ優勝」をしたチーム同士なんだから、それはいい試合になるよなと納得するような気持ちで見た。

  • 試合展開メモ

1回裏、オリックス西野選手出塁後、森選手のラインギリギリの打球を1塁大山選手が裁きダブルプレーか、という場面で、審判団審議からのファウル判定となった。リプレイも見たけれどこれは私にはちょっとわからないやつだった。岡田監督の抗議に8月18日の横浜スタジアムを思い出す。

3回裏にオリックスが先制。4回表で3つのヒットがでるもののランナーを返せず続く4回裏、2アウトから宗選手が四球を選び、じりじりと1、3塁の局面、野口選手のタイムリーから廣岡選手、中川選手とタイムリーが続いて一気にオリックスが3得点。ここで阪神の投手は西勇輝選手からビーズリー選手に交代となった。

その後もなかなか切り口が掴めないまま、投手が岡留選手に変わった7回裏に2アウト満塁のピンチを迎え、火消し役として島本選手を投入するも代打のゴンザレス選手のタイムリーで走者一掃の7-0に。
さらに8回裏にも1点を重ねられ、なんと昨日と真逆の8-0で試合終了となった。

とにかくオリックス先発の宮城投手が手強かった。阪神3番手で登板した岡留投手の大量の汗が印象に残ったが、この厳しい場面を経験したことは今後の飛躍につながるのだろう。特に好きな選手の一人である島本さんが打たれたのは悲しかったが、島本さんにはきっとこのシリーズでまだ出番があるはずだ。

完封負けは空気が重くなりそうなところだが、岡田監督は(自分の背番号80と重ねて)「番号的にはちょうどよかった」「甲子園帰ってからや」などと発言しており、さすがだった。*2

結果:オリックス8-0阪神


10月31日/3試合目

甲子園/先発:伊藤将司(阪神)vs東晃平(オリックス

移動日(実際には移動の必要ない距離で開催されたわけだけど)を1日挟み、甲子園球場へ移動してからの3戦目。
この日の午前中は、先日のドラフトで阪神に2位指名された椎葉選手が登場曲案を募集している、という記事*3を読んであれこれ考えていた。椎葉選手は藤川球児さんに憧れているということだったので、かねてよりリリーフ投手に使ってほしいと思っていた曲をあげていくうちに、私のリリーフ投手へのイメージは「閃光」なんだなと思ったりした。

夕方、例によって定時に会社を飛び出し、ラジオを聴きながら帰宅する。「今日も半袖で投げています」という実況で球場が目に浮かぶようだった。2023年の11月は異常気象とも言えるほどの暖かさ(というか暑さ)だけれど、それでも日が暮れた浜風の吹く球場は寒いだろう。
しかし伊藤将司投手といえば半袖なのだ。

  • 試合展開メモ

2回裏、4番大山選手のヒットで出塁。6番ノイジー選手のヒットで1、3塁、続く坂本選手のセカンドゴロで1点先制。幸先が良いと思われたけれど、3回表、オリックスの捕手若月選手の見事な2塁送球(若月アローと呼ばれているらしい)によって流れが途切れた感触があった。

続く4回表に頓宮選手のホームランで1-1、さらに5回表、廣岡選手のショートゴロの間に1点追加されたところから、悪送球もからんで1-4まで引き離される。

しかし7回裏、坂本選手、木浪選手のヒットから近本選手の四球で満塁。中野選手のゴロ、森下選手のタイムリーで3点を追加で4-5に詰めよる。こういった、下位打線から上位打線につながって畳み掛ける感じはまさに2023年の阪神タイガースだ。

そこから先がなかなか掴めず9回裏、オリックスは守護神、平野選手が登板。2アウト1、2塁という1打同点の状況で大山選手を迎えるも、空振り三振で辛くも届かずに試合終了。継投は伊藤、ブルワー、岩貞、石井、桐敷。

負けは負けだけれども、7回裏からの勢いに流れを取り戻した余韻が残る。木浪選手の3安打という好調にも希望がある。

結果:阪神4-5オリックス


11月1日/4試合目

甲子園/先発:才木浩人(阪神)vs山﨑福也(オリックス

甲子園2戦目。1勝2敗となり、相手に王手をかけさせないためにも絶対落とせない試合。
今日も今日とて定時に慌てて会社を飛び出し、ラジオと共に帰宅。

この日は阪神の先発陣の中でも特に好きな、そしてリーグ優勝をした9月14日の先発でもあった才木投手の先発日だったので、勝手に今日はきっと大丈夫だと期待していた。

しかしラジオを聴きながら旧Twitterの野球TLを見ていると、どうやら才木投手が出血しているらしい。マメが潰れたのか、爪だったらどうしようなんて心配しながら帰路を急いだものの、その間に才木投手は盗塁まで決める大活躍。
帰宅後に映像で見たその投げっぷりには、鬼気迫る迫力があった。5回表までしっかり投げてから交代、夜にインスタストーリーで指は大丈夫ですという報告もあってひと安心。

この日はとにかく「流れ」を感じる試合だった。流れを引き寄せた方が勝つという試合で、岡田監督のファンをも巻き込む采配が勝利を引き寄せた試合だったように感じた。
試合後、母親から「まさか大阪にいないよね?」とLINEがきて、感想をあれこれ話すなどした。

  • 試合展開メモ

1回裏、1番打者近本選手の出塁から中野選手の送りバント、からの昨日ついに復調の兆しがあった森下翔太選手のタイムリーで先制。
今年の森下翔太さんは本当にすごかった。私の中の「ルーキー」概念は森下くんで定着した気がする。注目を浴びるほどに調子があがっていくような天真爛漫さと、打てなくて涙を浮かべてしまうような負けず嫌いさ。29日には監督に「また泣いたらあかんから」*4なんてコメントされていたのにもう復調している。

2回表にはオリックス頓宮選手がフェンス直撃ヒットで一気に3塁。紅林選手のタイムリーで1-1の同点に詰め寄られるも、2回裏には木浪選手意地の出塁、才木投手が四球を選んで1,2塁となったチャンスに近本選手のタイムリーでふたたびリード。才木投手はこの回盗塁も見せた。

さらに3回表、オリックス森選手の打席での6-3ダブルプレーで流れが変わったのを感じた。才木投手も力が少し抜けたような雰囲気で、そこから5回表まで見事に投げ切る。
5回裏、またもや先頭打者近本選手がヒットで出塁。投手のエラーなども絡みつつ1点を追加。

6回表からマウンドにあがったのは今年大活躍し監督にもスペードのエースと称された桐敷投手。しかし回をまたいで7回表のマウンドでは、サードファンブルも絡んで先頭出塁を許してムードが変わリ、オリックス宗選手のタイムリーヒットにより3-3の同点となる。ここでサードは糸原選手に、投手は石井投手に交代となった。

7回裏、大山選手の打席で一打勝ち越しの構図となるが三振。

8回表、1アウト1,3塁となり、流れがオリックスに傾きかけたところで島本投手登場。オリックス廣岡選手の盗塁成功、3塁走者の紅林選手の走塁アウトがあり、2アウト1,3塁となる。尚もピンチが続く場面で、再びの投手交代。

CSから日本シリーズの流れでは、こういう場面に出てくるのは島本、石井、桐敷のうちの誰かなのだが、この日はすでに三人とも出ている。誰だろう、、となったところでまさかの65番、湯浅投手が登場した。
年始にはWBCでも活躍し、2023年のシリーズ開幕時には守護神を任されていたが、その後、けがなども重なり長いリハビリ生活を送っていた。1軍の試合はなんと6月15日以来。こんな展開、監督以外誰も想像していなかったのではないか*5

湯浅投手の登場とともに、球場の雰囲気がガラッと変わったのが画面越しにも伝わってくるようだった。みんな待っていたんだなと思う。笑ってマウンドに向かう様子が嬉しい。そしてたった1球を放ち、セカンドフライ、3アウトとした。

同点のまま、9回表を岩崎選手が危なげなく抑えて9回裏、近本選手の四球出塁からの中野、森下に申告敬遠。1アウト満塁となったところで、まるで昨日の再現のように打席は再び大山選手へ。2023年の不動の4番打者の、今度こそのサヨナラヒットで勝利が決まった。

サヨナラ後、責任を感じていたのか涙ぐむ桐敷選手を、投手陣が明るく迎えていたのが印象に残る。

結果:阪神4-3オリックス

youtu.be


(長くなったので5試合目からは後日あげます)

衣替え、継承、めでたい日

10月7日

久しぶり(昨年秋ぶり)のワクチン接種を受けに行った日。
初めての会場だったのだけど、これまでの会場では流れ作業だったのが(それはそれで良いのですが)、今回は問診票に記載した服薬の記録を見て昨年の手術を察し、どちらの腕に打つのがよいかまで確認をしてくれて感動した。
私の場合はどちらでも問題がない状態ではあるのだけど、症例によっては術側に注射は避けるべきとされていることを、私も入院前に説明を受けて知っていた。そういったさまざまな可能性を気遣ってくれるということがありがたいなと思う。

昼食と買い物をすませて帰宅した後は衣替えに手をつける。
着ない服をごっそり捨てようと意気込んでいたのに、気に入っていない服ほど真新しく、気に入っていた服ほどいたんでもう捨てた方が良い感じなので悲しい。
最近はどんな服を着たいのか自分でもよくわからなくて、もっとちゃんと気に入った服を納得して着たい気持ちがある。


10月9日

願掛けに意味などないことはわかっているのに、好きな選手が打たれた日に来ていたTシャツを着なくなった、というようなことを書いた時に、ならばぜひこの短編を読むといいとおすすめしていただいた「小島」(小山田浩子)という短編集を読み終えた。
おすすめしていただいた短編は収録されている14作中の最後の方にあったため、しばらくは1日1本と読み進めていたのだけれど、どれもどこかですれ違ったことのある誰かの物語のようで、どれも興味深く読んだ。視点となる人物のほとんどが中年女性なのもよい。
しかしなによりおすすめいただいた「継承」がよかった。
この本には「継承」を含めて3作、広島カープを題材にした短編が収録されている。
以前読んだ「ディス・イズ・ザ・デイ」(津村記久子)のように、生活に溶け込んだスポーツの応援というものが描かれていて面白い。彼の地では、私の着なくなったTシャツと同じような、日常と地続きにある願掛けのようなものが、街の人々のそこここに意識されずともあるのだろうなと想像する。
正直なところ、そんなふうに地元の球団を応援するということに羨ましさも感じているのだけど、
しかしもう運命は分たれてしまったのだ。
今年は翻弄され続けていたけれど、来シーズンはもう少し整理して自分のみた野球というものを記録しておけるようにしたい。


10月10日

妹の子がついに産まれた。
9月末が予定日とされており、もしかしたら2週間くらい早く生まれるかもしれない、なんて話も聞いていたのだけど、なんだんかんだ2週間近く遅れての出産となったため、私を含む周りもずーっとそわそわし通しだったのだ。
母子共に健康との知らせにホッとして、LINEで送ってもらった写真を見てみんなでかわいいと言い合い、そのうち妹の返信が途絶えたのできっと疲労困憊で眠っているだろうと思った。
本当にお疲れ様でした。
ひとまず母と見舞いの日程を相談し、私は退院日の付き添いに行くこととなったので、ひたすらベビー服を見るなどする。もうすでに数着買ってはいるのですが、お祝いはいくらあってもいいですからね。
そんなわけで10月10日がめでたい日となった。

10月4日シーズン最終戦

9月末に雨天中止となった試合の振替試合を見に、10月4日は午後休をとって神宮球場へ向かった。
日程がずれたことで、このカードがヤクルトと阪神、どちらのチームにとっても今シーズンの最終戦となったため、再びの雨予報ではあったけれど、よっぽどのことがない限りはやるだろうと思いつつ向かう。

結果、試合開始前には小雨が降り始め、複数回の中断も挟んだ試合だったがなんとか最後まで試合は行われた。

私も当初は長靴とポンチョ+レインハットくらいの軽装備で見ていたのが、雨脚が強まったのでポンチョの下にゴアテックスのジャケットも着込んで臨んだ。かつて揃えた雨装備がこんなところで役立つとは思わなかった。


試合は1回表、大山選手の2ラン、続く佐藤選手のホームランで3点を先制してのスタート。
1回裏に1点、5回裏に2点を返され同点となるも、6回表に佐藤輝明選手の犠牲フライで3-4と勝ち越す。
雨のせいもあってかエラーも多い試合だった。雨の中、1点差という先の読めない展開で、ブルペンで肩を作り続けている選手まで濡れていることも気になる。


そして1点差のまま9回表。岩崎選手の出番がやってきた。
雨脚が強まったように感じる。
客席も選手も雨の中、次の一球にじっと目を凝らしているのは不思議な光景だ。
視線の中央では、まるで雨など降っていないかのように、いつも通りの投球準備が行われる。

1点差のマウンドにあるのはまだ定着していない不確かな未来だ。
浮かび上がってくるその像を祈るような気持ちで見守る。


結果1アウトはとったものの、タイムリーヒットで同点、今日HRを打っていた山田選手の犠牲フライで勝ち越され、結果サヨナラ負けとなった。

好きな選手が打たれるのは本当に悲しい。
今年の野球観戦は何もかもが初めて尽くしだったのだけど、好きな選手の敗戦を見るのはまだ先でもよかった気がする。

だけど、すでに今年35セーブを挙げた岩崎選手が、10年目にして初タイトルを獲得することは確定しているのだ。岩崎選手の今年の活躍は、ずっと記録に残り続けることが決まっているのだから、大丈夫だと思う。
自分のような遅れてきたファンにとっては「記録」は道しるべであったから、なおのこと好きな選手のタイトルが嬉しい。

それに今年はまだ「この先」があるのだし。


ただ、ひとまずはこれが私にとっての初めての「シーズン終了」だ。
雨で視界が滲む。もうすっかり秋の空気だ。

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