NANA 1−13巻/矢沢あい

NANA (1)

NANA (1)

Nana (13) (りぼんマスコットコミックス―クッキー (1633))
久々に漫画喫茶に行ったので、大人気漫画NANA1〜13巻を読んでみた。ちなみに矢沢あいさんの漫画を読むのは小学校の頃の「りぼん」以来。だけと当時の漫画では主人公たちが工藤静香っぽかったことくらいしか覚えてない。
5巻くらいまでの展開は、とにかく典型的な少女漫画だと思う。
NANAのストーリーには主に二つの軸があって、1つは「ある平凡な女の子が、ヒーローに見いだされる話」。白馬の王子様ものといってもいい、典型的少女漫画のスタイルだと思う。その王子様がロックスターに置き換えられた少女漫画というのはこれまでにもたくさんあって、例えば、くらもちふさこさんはデビュー当時の70年代にそういった作品を多く描いた漫画家さんだし(例えば「白いアイドル」とか。それからレイラのキャラクタは「アンコールは3回」を彷佛とさせるとこがある。)大島弓子さんにもそういう題材のものは多くあった。ちょっと後だと楠本まきさんの「kiss××××」とかも「NANA」との暮らしに雰囲気が近い。バンド内恋愛に限らなければ、「花より男子」とか、とにかく白馬の王子様ものっていうのは少女漫画の定番だ。
ただ、「NANA」のもうひとつの軸となっているのが「自分に足りないものを補い合う友情」で、自分とか居場所とかそういうのを探す漫画は少女漫画と言うより女性漫画でよく扱われるテーマなんじゃないかと思う。ちょっと自己啓発っぽい。
はっきりいって、物語の冒頭でのハチのキャラクターはかなり、ちょっとどうかと思うとこが多い。我がままで無目的に見えるシーンが多過ぎる。このへんが、前者であげた王子さまものに登場した少女たち(基本的に前向きな良い子。目立つタイプではない)と大きく異なっているところに感じてしまう。ここでハチが開きなおっているならば、恋愛至上主義なキャラクタも、「ハッピー・マニア」のシゲタカヨコとかと同系列のタイプになるんだけど、そうならないのは、ハチもまた憧れの対象になるからだった。
何巻だったか忘れたけれど、視点がナナに移ったところでこの漫画の雰囲気が変わってくる。それまで描かれてきたナナの内面というと、レイラの才能に対して嫉妬するシーンくらいしか印象的な部分が無く、惣領冬実さんの「3−THREE−」を思いだしたりして、そこを中心に展開していくんだろうか…と思っていた。が、そうはならない。
ハチの妊娠、結婚(予定)まで話が進むと、もうハチには「目的」がきちんと存在している。そこで今度はナナが物語の中心になってくるのだけど、傷を負っているナナはハチの天真爛漫さに惹かれるのだ、みたいなことになり、ハチがいきなり良い子に見えはじめる。ちょっとずるいような気もするけど、ともかく、ここでハチが憧れる側から憧れられる側にシフトしてしまうのはうまいなーと思った。
つまりこの漫画の軸だった「平凡な主人公とヒーロー」「補いあう関係」という構造は結局両方ともナナとハチを中心に展開してたわけだ。だから、二人のナナ(主にハチ)が複数の男性に恋をしていても、本命は常にお互いであるところでプラトニックに見える。特にナナの屈折した独占欲が発動しはじめたあたりから、周囲の男性陣皆が辛そうな顔をしはじめるのもまたすごい。それでもって、これはもしかしたら、各男性陣にときめく読者の女の子と主人公二人がライバルにならないための構造なんじゃないだろうかと思ったりした。(それは言い過ぎか)
なんて、こうしてダラダラと感想を書いていると、エッセンスてんこもりの漫画に思えるけれど、この漫画を引っ張っているしかけってのは実はハチの語るモノローグにあるんだろうと思う。
物語の冒頭から、ナナのいない未来というものを匂わせてはいるので、きっとそこが終着駅なのだとは思うんだけど、こういうしかけをしてある漫画ってのはどうしてもその終着駅を見てみたい気にさせるものですよね。で、途中でだれないためにもエピソードを惜し気もなく消費していくのだろうか、と、とりあえず13巻まで読んでみて思いました。
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ところでこの漫画に出てくるバンドが二つとも北国出身でピストルズでヴィヴィアンでパンクっていうとこでなんとなく初期JUDY AND MARYがモデルなのかなーと思ったりしてたんですが、映画の予告とか見てるとそうでもないのかな。もうちょっとヴィジュアル系(って言葉は今でも使えるんだろうか)っぽい感じなの?

【参考】

ARTIFACT@ハテナ系さんのナナ「NANA」関連記事リンク集
http://d.hatena.ne.jp/./kanose/20050925/nana

作者出身地から考える『NANA』ってことが主に書かれていたんだけども、矢沢あいさんが兵庫出身ってのはなんだかわかる気がするなぁ。西村しのぶさんとかもそうだけど、衣服にこだわる漫画家さんが多いような…て例が二人だけじゃ説得力ないか。