リトル・ミス・サンシャイン

あちこちで好評価だったので、わくわくして見にいったんですが、やー楽しい映画だったな。
「勝ち馬/負け犬」が口癖で成功論の出版を夢見る父親と、ヘロイン常用で老人ホームを追い出されたおじいちゃん、ニーチェマニアで願かけに沈黙しつづける息子ドウェーンと美人コンテスト出場を夢見る娘オリーブ。恋人にふられて自殺未遂をしたことで一家のもとで暮らすことになるプルースト学者の伯父。そして家族をまとめようと孤軍奮闘しつつストレスのたまりまくっている母親。そんな一家の集う食卓は確かにいたたまれないもので、ドウェーンは伯父に「ようこそ地獄へ」なんてメモを見せる。
物語は、オリーブに舞い込んだ「リトル・ミス・サンシャイン」という美少女コンテスト出場権をきっかけに、アリゾナからカリフォルニアまでおんぼろバスで旅をすることになる道中を描いたものです。
一家は確かにバラバラなんだけど、それをまとめてるものはなんだろうね、ということを映画を見ながら考えていた。気があわなかったり、相手を傷つけることをつい言ってしまったり、尊重という名の無関心だったりは、見ていて切なくなったりもするのだけど、それはきっと、あのおんぼろハスに手こずるようなものなのだと思う。
仕方ないなぁ、と思いながらも、目的地があれば力をあわせることができる。そもそもがバラバラなのだ。それを互いに認めあうことで、はじめて気付くこともある。長い付き合いだっていうのにね。
混沌とした内面を持つ登場人物が目立つ中、幼いオリーブだけは天真爛漫であるように見える。しかし「口先ばっかり」とおじいちゃんにむかって力なく笑うオリーブを見た瞬間、こう、胸がしめつけられるような気がした。オリーブが小太りの眼鏡っこであることは、美少女コンテストに登場する女の子たちとは異質な存在として描かれているということでもある。でも監督はたぶん、この場面に惜しみなく力を、そしてオリーブへの愛を注ぎまくったんだろうなと思った。彼女のかわいらしさは、ミスコンの価値観とは別の次元に燦然と輝いている。

あと、この映画は音楽もとてもよかった。サントラ売ってるかなと思ったけど見なかったな。サイトを見ると、デヴォーチカというバンドが挿入歌を歌っていたらしい。「僕の大事なコレクション」でも「How It Ends」という曲を提供していたバンドで、この曲の別ヴァージョンが本作でも使用されていたとのこと。探してみよう。