gift/古川日出男

小説すばる」に掲載されたシリーズ「かわいい壊れた神様」に書き下ろし3編を加えた短編集。

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まだこれ読んでなかった、ってさかのぼって読んだので、あちこちにそれ以前、以後の、ベルカやロックンロールやLOVEや、の片鱗が見えるのも楽しいけれど、もし2番目に読む古川日出男作品を探しているならこれを、とおすすめしたい作品集だった。―― なんで2作目かっていうと、すごく読みやすい短編集なので、さらっと飲み干してしまうこともできそうだし、長いインプロヴィゼーションのような物語に触れてから、の方が、ここにこれからの地平を見ることができて楽しいんじゃないかと思うから。だけどまあ、順序は読んでから組み立ててもいいか。
で、この短編集には、全部で19もの短いお話が収録されている。
いろんな語り手がでてきて、時には作者自身と思われる人物も登場して、彼らの語る「世界」はここと、少しずつずれているけれど、でも重なっている感じがする。例えば夜。眠っているあいだに見る夢のように、その幕切れは時にあっけなく、またある時には目覚めても続く。
じっさい、これはそんな風にして集められた、物語の断片なのだと思う。だからわたしはここにそれ以前、以後の物語を見るし、これから語られるかもしれない物語についても、思い浮かべてみたり、する。
「あたしはあたしの映像のなかにいる」「オトヤ君」「さよなら神様」が特にすきだ。「台場国、建つ」は、声亡き言語が誕生するその瞬間に、そそられた。